群衆雪崩で混乱拡大か、インドネシアサッカー場の悲劇 催涙ガス使用は「非人道的」とも

カテゴリー/ フリースペース |投稿者/ ビレンワークアップ
2022年10月10日

インドネシアのサッカースタジアムで1日夜に発生した暴動は、サッカー史で過去2番目に多い130人以上の犠牲者を出す惨事となった。試合結果に激怒した約3千人が暴徒化し、鎮圧に催涙ガスが使用されたことで混乱に拍車がかかったとみられる。サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会の開幕を11月に控え、安全対策の充実が求められる。 【写真】インドネシア東ジャワ州のサッカー場で、グラウンドに乱入する観客ら ■奇跡願うも… 表情を失った人々がずらりと横たわったスタジアムの通路。頭を横に向けたまま微動だにしないユニホーム姿の子供を前に母親は、ただただ奇跡を願うことしかできなかった-。 インドネシア東ジャワ州マランの「カンジュルハン・スタジアム」に、アレマFCがペルセバヤを迎えた1日の一戦。交流サイト(SNS)上には、こうした動画が何本も投稿された。 アレマFCはペルセバヤを相手に本拠地で23年間無敗を誇ったものの、その記録がこの日途絶えた。この結果に対し、一部サポーターが激怒。約3千人の観客がピッチへなだれ込んだ。 現地報道などによると、暴徒化した観客に警官が盾や警棒、さらには催涙ガスで応戦。逃れようとした観客が出口付近で折り重なるように倒れ、9日までに131人が死亡、300人以上が負傷した。主な死因は窒息死や圧死だった。 日本で暮らすインドネシア人のノバ・レスタファさん(33)は「情報が錯綜(さくそう)している。事故原因を知りたい」と、母国での痛ましい事故に胸を痛めた。 ■「群衆雪崩」発生か 催涙ガスは、観客の乱入を食い止めるため、警官がやむをえず発射したとの見方も広がる。だが、煙で視界を遮られた人が気を失うなどとして、使用の判断は「非人道的」とも指弾された。 群集安全学が専門の関西大の川口寿裕教授は、現地の報道を踏まえて「興奮状態で向かってくる数千人を前に、警備側も混乱したはずだ」と指摘する一方、催涙ガスの使用は「パニックを引き起こす」とし、混乱に拍車をかけたとみる。 川口教授は今回の事故について、ガスの煙から逃れようとした観客が屋外へ通じる狭い出口に殺到したため、「群衆雪崩」が発生したとみる。1人が倒れると周りが次々と転倒する現象で、1平方メートル内に10人以上の密度で人が集まると、死亡やけがのリスクが増す。出口付近の群衆密度が限界を超え、多くの犠牲者が出た可能性が高い。だが、観客がパニックになれば制御する術はないといい、その時点で「事故は防ぎようがない」のだという。 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は「犠牲者に深いお悔やみを申し上げる」と哀悼の意を示し、安全策が講じられるまでのリーグ戦中止を要請。国際サッカー連盟(FIFA)は暴徒化した観客が相手でも催涙ガスの使用を禁じており、事故原因の究明に乗り出すことを決めている。 ■W杯には120万人が サッカーの試合を巡る悲劇は繰り返し起きている。1964年、ペルーで開かれた東京五輪南米予選では試合後の暴動をきっかけに、史上最悪の318人の死者が出た。89年には、英シェフィールドでゴール裏の立ち見席に収容人員を超すサポーターが殺到し、97人が死亡した。 11月には中東で初のサッカーW杯カタール大会も控える。世界中から120万人以上が観戦に訪れると見込まれ、「フーリガン」と呼ばれる熱狂的ファンが、スタジアムの内外で騒ぎを起こすことが懸念される。 川口教授は「アラブやヨーロッパでは、サッカーは『国技』といえるほど人気がある。今回の悲劇を教訓に、サッカー界全体で安全対策の見直しが求められるだろう」と話している。

 
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