NATOがロシアを敵国認定、中国の「組織的な挑戦」初明記…首脳会議で新たな「戦略概念」採択
2022年06月30日
北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が28日夜、スペインの首都マドリードで開幕した。29日には、今後10年間の行動指針となる新たな「戦略概念」を採択し、ウクライナを侵略したロシアを事実上の敵国と認定した。中国についても欧米への「組織的な挑戦」を突きつけていると初めて明記し、NATOは冷戦後最大の転換点を迎えている。 【図表】NATO首脳会議のポイント
NATOの戦略概念の改訂は冷戦後4回目で、2010年以来となる。
ロシアは破壊的な手段で直接的な支配の確立を試みているとして、米欧の安全保障への「最も重大で直接的な脅威」と位置づけた。現行の戦略概念では、ロシアを「戦略的パートナー」としており、NATOの危機管理の指針を大きく転換させた。ただ「NATOは対立を求めず、ロシアに脅威を与えることはない」として、防衛体制強化による抑止力を追求する方針を改めて示した。
中国については「多岐にわたる政治的、経済的、軍事的な手段を使って、力を誇示しようとしている」と覇権的な行動のリスクに言及した。経済面でも「重要インフラや戦略物資を握ろうとしている」と強調した。欧州とインド太平洋の安全保障は不可分として、日本、韓国、豪州、ニュージーランドとの協力強化を推進する方針だ。
29日午後~30日には具体的な戦略も協議される。欧州東部の防衛体制を大幅に見直し、強化を図る方針を打ち出す。安全保障上の危機が起きた際に出動する「即応部隊」を現在の4万人規模から30万人以上まで増員する考えだ。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は29日の首脳会議で「ロシアや中国のような権威主義体制が、ルールに基づく国際秩序に挑戦している。NATOは組織を強化する」と訴えた。
ウクライナ支援策には、長期の軍事支援を強調し、旧ソ連製が主流のウクライナ軍の兵器をNATO基準に近づけることを含めた「包括的支援」策も盛り込む。29日の会議には、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がオンライン形式で出席し、追加支援を訴えた。
スウェーデンとフィンランドのNATO新規加盟を巡っては、反対していたトルコが28日、北欧2国と首脳協議を開き、加盟を認める覚書に署名した。北欧2国は、トルコが求めるクルド人勢力らの引き渡しなどに応じる。これにより、29日の首脳会議では、北欧2国の加盟申請が全会一致で認められ、近く、加盟に向けた手続きが始まる。
北欧2国加盟に合意 「中ロ対抗」明確化、新戦略策定 NATO首脳会議
2022年06月30日
北大西洋条約機構(NATO)は29日、マドリードで開幕した首脳会議で、北欧のスウェーデンとフィンランドの加盟議定書に署名することに合意した。 【図解】NATOの拡大 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、長年の軍事的な中立政策からの脱却を決断した北欧2カ国が、31、32カ国目の加盟国となることがほぼ確実となった。欧州の安全保障は大きな転換点を迎える。 会議では、向こう10年間のNATOの行動指針を示す「戦略概念」も12年ぶりに改定。ロシアを安全保障への「最大で直接的な脅威」と位置付け、欧州東部を中心にNATOの防衛態勢を長期的に大幅増強することを確認した。さらに覇権主義的な動きを強める中国に初めて言及し、「野心と威圧的政策は、われわれの利益や安保、価値観に挑戦している」と指摘。ロシアに次ぐ戦略の柱に据え、対抗姿勢を明確にした。 会議は30日まで2日間の日程。ストルテンベルグ事務総長は29日、記者会見し「われわれの安保にとって極めて重要な時を迎える中、同盟を変革し強化する決定を下した」と語った。 北欧2カ国加盟をめぐっては、両国の「テロ組織支援」などを理由に反対していたトルコが28日に支持に転じ、承認に必要な全加盟国の同意にめどが付いた。ただ、正式加盟には今後、各加盟国での議定書批准が求められる。少なくとも数カ月はかかるとみられており、各国議会などでの議論が難航する可能性もある。 一方、戦略概念では「対中ロ」を念頭に日本と韓国、オーストラリア、ニュージーランド4カ国などのパートナー国と、国際秩序維持で連携を深めることも明記した。29日の一部討議には、岸田文雄首相ら4カ国の首脳が初めて参加。民主主義陣営の結束を示した。
米、ポーランドに常駐部隊設置
2022年06月30日
ペインのマドリードで開幕した北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席したバイデン米大統領は29日、ポーランドに恒常的な米軍司令部を新設することなどを柱とする欧州防衛体制の強化策を表明した。ロシアによるウクライナ侵攻を受けた安全保障環境の激変に対応するため、米軍として東欧では初となる常駐部隊をポーランドに置くほか、ルーマニアやバルト3国に巡回させている部隊を増強する。 【イラストで解説】要請を大きく下回るウクライナへの武器支援 バイデン政権はまた、最新鋭ステルス戦闘機F35の2個飛行隊を英国に追加配備するほか、スペインに配備されている海軍駆逐艦を現行の4隻から6隻体制にすることでも調整中だと発表。ドイツとイタリアでは防空態勢の強化を進める。 首脳会議は同日、ロシアのウクライナ侵攻や覇権主義を強める中国への対応などについて実質的な討議を開始。ソ連時代の軍備に依存するウクライナ軍の近代化に向けた新たな「包括的支援策」でも合意する見通しで、西側諸国の連携を強化する。 首脳会議は30日まで行われ、会期中に今後10年間の行動指針となる新たな「戦略概念」を採択する。NATOのストルテンベルグ事務総長によると、新戦略概念では、ロシアを「安全保障に対する最も重大かつ直接的な脅威」と位置づけるほか、中国に対するNATOの立場を初めて示す。 ストルテンベルグ氏は28日、「中国とロシアはかつてないほど接近している」と懸念を表明。首脳会議には、台頭する中国への対応で連携するため、日本、オーストラリア、韓国、ニュージーランドの首脳も参加する。
英国が日本産食品の輸入規制撤廃 原発事故から全面解除
2022年06月30日
政府は29日、東京電力福島第1原発事故後の日本産食品の輸入規制について、英国政府が同日付で撤廃したと発表した。英国は福島や宮城、山形、茨城、群馬、新潟、山梨、長野、静岡の計9県のキノコ類などを対象としていたが、全面解除した。 これで、規制を維持しているのは中国や韓国など計13カ国・地域となった。政府は引き続き撤廃の働きかけを続ける。 これまで英国で規制されていたのは、キノコ類の他に福島のカツオやサンマなど一部水産物、宮城のタケノコやワラビなど一部の山菜類、茨城のコシアブラなど。
福島県の勿来火力発電所9号機がトラブルで停止 最大出力60万kW供給できず
2022年06月30日
電力需給の逼迫(ひっぱく)が懸念されるなか、東京電力管内に電力を供給している福島県の勿来火力発電所9号機がトラブルで停止したことが分かりました。 勿来火力発電所9号機は出力は最大60万キロワットで、東京電力や東北電力管内に電力を供給しています。 関係者によりますと、何らかのトラブルで30日未明に停止したということです。 復旧のめどはたっておらず、これにより30日の電力供給は想定よりも最大で60万キロワット減少することになります。 30日も猛暑が続き、政府は東京電力管内では「電力需給ひっ迫注意報」が出ていて、想定外の供給力の減少で需給が厳しくなる見通しです。
円相場、一時1ドル=137円台に…24年ぶりの円安水準
2022年06月30日
29日の外国為替市場で、円相場は一時、1ドル=137円台まで円安・ドル高が進み、1998年以来、約24年ぶりの円安水準を更新した。
欧州中央銀行(ECB)が29日にポルトガルで開いた金融政策に関する討論会で、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、米国では家計も企業も財務的に安定しているとして「経済全般が金融引き締めに耐えられる」と述べた。インフレ(物価上昇)を抑制するため、米国で金融引き締めがさらに進むとの思惑が広がった。
夏の電気代高止まり…1年前の3割増しで家計負担重く 8月の電気料金
2022年06月30日
電力大手10社は先ほど、8月の電気料金について、標準家庭のケースで東京電力では247円、中部電力では231円上昇するなど、4社が値上げすると発表した。 東京電力の場合、標準家庭のケースでは9118円で、1年前の8月(6960円)と比べて31%(2158円)の上昇だ。 日本の発電量のおよそ8割を占める火力発電の燃料費が、ロシアによるウクライナ侵攻、円安などにより高騰しており、電気料金に反映された。 電気料金を巡っては、電力の安定供給のために、燃料の高騰分を自動的に電気料金に上乗せする仕組みが導入されている。 大手10社のうち関西電力など7社は7月までに上限に達し、北海道電力も今月で上限に達した。 上限を超えた燃料費の上昇分は料金に上乗せできず、各社が自己負担している。 東京電力も早ければ9月に自己負担が発生する可能性がある。 一方、大手都市ガス4社のうち、東京ガスは燃料費の価格転嫁枠の上限となったため値上げしないが、大阪ガスなど3社は、8月に89円から68円値上げとなる。
食品宅配大手のオイシックス、給食大手のシダックスに80億円出資へ…収益基盤の拡大図る
2022年06月30日
食品宅配大手の「オイシックス・ラ・大地」は29日、給食大手の「シダックス」株を取得すると発表した。取得金額は80億円。8月下旬から9月上旬の取得を目指している。
オイシックスとしては、強みである質の高い野菜の調達力をシダックスの持つ給食調理に生かし、収益基盤の拡大を図る狙いがある。今後、シダックス側と協業の可否についても協議する。
国内投資ファンドが保有するシダックスの優先株を買い取る。優先株を普通株に転換した場合の出資比率は26・5%となり、持ち分法適用会社になる可能性がある。
食品宅配大手のオイシックス・ラ・大地は29日、給食大手シダックスに出資すると発表した。業務提携に向けても協議を進め、シダックスが強みを持つ高齢者施設などの給食事業で収益拡大を目指す。
オイシックスは8月下旬から9月上旬をメドに、既存株主が保有する優先株を80億円で取得する。議決権のある普通株に転換した場合、出資比率は26・5%となり、持ち分法適用会社になる可能性がある。
オイシックスは有機野菜の調達でノウハウを持つほか、保育園などに向けて下処理済みの食材を提供するサービスを展開する。シダックスが手がける病院食などの給食事業と組み合わせることで、事業のすそ野を広げる狙いがある。関係者は「病院の食事をもっとおいしくしたい」と話す。
ただ、シダックスは給食を含むフードサービス事業について「株主かどうかは関係なく、一番いい提携先を選んでいく」(幹部)とのスタンス。幅広い選択肢を検討する構えで、提携協議の行方は見通せない。
オイシックスは宅配会社「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」との経営統合で規模を拡大し、宅配の会員数は45万人超に上る。シダックスは1990年代にカラオケなどに事業を拡大したが、2018年にカラオケ事業を売却。主力のフードサービス事業の拡大を目指している。
株主総会ピーク、600社 三井住友FGやオリエンタルラン
2022年06月30日
3月期決算上場企業の株主総会が29日、ピークを迎えた。 東証によると、同日は全体の26%に当たる約600社が開催。コロナ下3年目の今年は感染拡大の落ち着きを受けて出席株主数が増加傾向にあり、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原材料高が業績に与える影響や不祥事への対応などに真剣な視線が注がれた。 【図解】企業の景況感 三井住友フィナンシャルグループ(FG)は29日、東京都内で株主総会を開催。子会社のSMBC日興証券元幹部による相場操縦事件に関し、太田純FG社長が陳謝した。来場した東京都の40代男性株主は「昔の金融機関でよく見聞きしたような話。法令順守の体制に疑問を覚える」と話していた。 同社には株主の環境団体が気候変動対策の強化を定款に明記するよう提案していたが、否決された。 東京ディズニーランドなどを運営するオリエンタルランドは千葉市で開いた総会で、独立社外取締役を2人増やし、取締役に占める割合を3分の1以上とする選任案が承認された。コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の要請を踏まえ経営への監督機能を強化、東証最上位のプライム市場に上場する企業に求められる体制を整える。 京都銀行が京都市で開いた総会では、英投資ファンド、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズが特別配当を求めた株主提案が否決された。岩手銀行など3行に対する同様の提案も既に否決されている。「物言う株主」が保有資産の価値に比べて株価が大幅に見劣りしている地銀に対し「資産の有効活用を急がせる狙いがある」(市場関係者)として、注目されていた。
東芝、非上場化へ議論 新取締役会、公平性に疑問も
2022年06月30日
経営の混乱が続く東芝の進路を決める新たな取締役体制が28日、定時株主総会で決まった。 【図解】東芝が提案した取締役候補者と株主総会の採決結果 新取締役会は、社外から募集した株式非上場化を含む経営再建案10件の絞り込みという重要な役割を担う。総会で承認された13人の中には「物言う株主」として知られる投資ファンドの幹部2人が含まれ、メンバー構成の公平性を欠くとして2人の選任に反対していた社外取締役の綿引万里子氏(元名古屋高裁長官)が再任後に辞任する波乱の展開となった。 物言う株主出身の2人は、新任の社外取締役となった大株主の米資産運用会社ファラロン・キャピタル・マネージメントの今井英次郎氏と米エリオット・マネジメントのナビール・バンジー氏。2人の選任に対し、綿引氏は総会前に「取締役会構成の多様性、公平性、バランスを欠く」として反対を表明していた。綿引氏の辞任により、取締役会でファンドの意見が強まる可能性がある。 総会で反対理由を株主に問われた綿引氏は「情報管理の徹底や利益相反の回避などの問題で(東芝が出身母体のファンドと締結した)合意書に不足がある」と主張。東芝よりファンドの利益が優先される可能性に懸念を示した。 これに対し、候補者を選んだ指名委員会のレイモンド・ゼイジ委員長は「大口株主と執行側の信頼感の欠如を解決したい」と株主に理解を求めた。利益相反回避についても「複数の弁護士事務所が審査を行って合意書を締結し、独立性は担保されている」と強調した。 綿引氏が反対した背景には、2人が加わると13人中6人がファンドと関係のあるメンバーとなる懸念もあった。今回再任された社外取締役のうちゼイジ氏ら4人はファンドの推薦に基づくメンバーで、綿引氏は総会前に「ファンドから既に4人入っており、さらに2人はバランスを欠く」と訴えていた。 新任のファンド出身者2人は再建案の提案内容を評価する特別委員会のメンバーに加わる予定で、独立性を問われ続けることになる。