プーチン政権に不満渦巻く くすぶるクーデター説 ロシア高官辞任、国防相は雲隠れ
2022年03月30日
ロシアのウクライナ侵攻から1カ月が過ぎ、プーチン政権内部で異変が起きているのではないかという観測が持ち上がっている。 【写真】辞任したロシアのチュバイス大統領特別代表 今月23日には大物の高官が辞任し、抗議の意図があったと報じられた。作戦の責任者、ショイグ国防相は公の場から一時姿を消した。英メディアは内部告発を根拠に、プーチン大統領の古巣の連邦保安局(FSB)によるクーデター説まで伝えている。 首都キエフを短期で攻略する計画は失敗。逆に強力な制裁でロシア経済危機の長期化は必至だ。ロシア軍は東部に作戦をシフトさせる方針だが、以前からおおむね支配していた地域で、戦果とアピールできるかは疑わしい。 こうした中、チュバイス大統領特別代表が辞任した。プーチン氏とは一定の距離があった大物だが、侵攻後で最高位の離反と言われる。 政権が国民による世論誘導の頼みの綱とする政府系テレビでも、不協和音が生じている。今月中旬、ニュース番組の生放送中に女性編集スタッフが「戦争反対」のメッセージを掲示。著名特派員も侵攻に抗議して辞職した。 プーチン氏が在籍した旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後継機関、FSBでも内部告発が相次いでいるとされる。英紙タイムズ(電子版)は23日、リーク情報に詳しい在外活動家の話として「ウクライナを電撃制圧する計画が失敗した後、ロシア情報機関で不満と混乱が渦巻いている」と内幕を報じた。 この活動家は「過去20年間、プーチン氏は安定をもたらしたが、今や過去の話。FSB将校は戦争が経済に破滅をもたらすことを知っており、ソ連に戻りたいわけではない」と指摘。その上で「毎週、毎月と戦争が続けば続くほど、情報機関がクーデターを起こすリスクは高まっていく」と警鐘を鳴らした。 特に注目されるのはショイグ氏の消息だ。今月11日の安全保障会議から約2週間、雲隠れした。24日のオンライン形式の安保会議で報告を行ったが、過去の映像とささやかれている。その後も国防省会議を主宰したものの、公開されたのは同省提供の映像で、病気説などを払拭(ふっしょく)するには至っていない。 国防相が重要なのは「核のボタン」の管理に関係するからだ。英調査報道機関のジャーナリストは「政府専用機が防空壕(ごう)があるとされる中部ウファに行き来しており、ショイグ氏はそこにいる可能性がある」と分析した。事実なら、プーチン政権は核戦争のシナリオを排除していないとも言えそうだ。
ウクライナが「中立化」提示、プーチン氏には受け入れ困難な内容も…予断許さぬ停戦交渉
2022年03月30日
ロシアのウクライナ侵攻を巡る29日の停戦協議で、ウクライナは「中立化」に関して具体的な提案を行った。これを受け入れるかどうかはロシアのプーチン大統領の判断に委ねられる。提案にはプーチン氏にとって承服し難い内容が含まれており、停戦協議の行方は楽観できない。 【動画】ウクライナ軍が東部の町を奪還、住民が歓迎…AP通信が28日撮影

29日、トルコ・イスタンブールで、停戦協議に臨むロシア(右)とウクライナ(奥)の代表団を迎えたトルコのエルドアン大統領(左)=ロイター
ロシアは2月28日に始まった停戦協議で当初、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に「全面降伏」を迫っていた。今回の協議で、ロシア側はウクライナの提案についてプーチン氏に検討を求めると表明した。これは停戦に向けて一歩前進したとも言える。
ただしウクライナが提示した自国の安全の保証を巡る枠組み案では、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を阻止し中立化は実現できるものの、ウクライナの安全保障に対し米欧の関与が深まることになる。ロシアとウクライナの「歴史的な一体性」を主張してきたプーチン氏にとっては受け入れのハードルは高い。ウクライナへの影響力低下につながるためだ。
ロシアが2014年に併合した南部クリミアの地位についても、ロシアは「領土問題は存在しない」との立場を維持しており、プーチン氏が一転して、15年に及ぶ協議に同意するとは考えにくい。
ロシア代表団トップのウラジーミル・メジンスキー大統領補佐官は協議終了後、記者団に交渉内容を説明した際、「ウクライナ側の提案によると」と繰り返し、ロシア側が同意したものかどうかについては言質を与えなかった。
停戦協議は曲折が予想される。
米大統領「行動見極める」 ロシアの攻撃縮小表明で
2022年03月30日
バイデン米大統領は29日、ロシアがウクライナの首都キエフなどへの攻撃を大幅に縮小すると表明したことについて「どういう行動を取るか見る必要がある」と述べ、ロシアの対応を見極める考えを示した。ホワイトハウスで開催した米シンガポール首脳会談後の共同記者会見で語った。 凍傷で戦線離脱も ロシア軍、投入戦力の1割以上失った可能性
バイデン氏は29日のフランスと英国、ドイツ、イタリアの首脳との電話会談でも、ロシアの対応を見極めるとの共通認識が得られたと説明した。その上で、強力な対ロ制裁やウクライナに対する武器提供を続けながら「状況を注視していく」と表明した。
ロ軍、キエフ周辺から少数移動 「撤退でなく再配置」=米国防総省
2022年03月30日
米国防総省は29日、ロシアがウクライナの首都キエフ周辺の拠点からごく少数の部隊を移動させ始めたと発表した。ただ戦争からの撤退ではなく再配置だとした。 国防総省のカービー報道官が会見で、ここ1─2日で少数のロシア軍がキエフから移動したとの認識を示した上で「ただ、これは再配置であって真の撤退ではない。ウクライナの他の地域に対する大規模な攻撃を監視する用意を整えるべきであり、キエフに対する脅威が去ったことを意味するものではない」と述べた。 ホワイトハウスのベディングフィールド報道官も29日、ロシアはウクライナに駐留している部隊を再配置しており、撤退はしていないと述べた。 これに先立ち、米政府高官も29日、「キエフ周辺からのロシア軍の移動は撤退ではなく再配置と捉えている。ウクライナの他の地域に対する大規模な攻撃が続くことに備える必要がある」と指摘。「ロシアは手法を変えている。ロシアが紛争を終わらせたと勘違いしてはならない」と語った。 バイデン大統領は記者団に対し「ロシアが提案を実行に移すかどうかを見守る」と表明。ロシアがウクライナでの軍事作戦を縮小させるかまだ分からないとし、米国や同盟国はウクライナに対する強力な支援とロシアへの制裁を継続する考えを示した。
東部の親ロシア派地域に集中表明 ショイグ国防相、方針転換図る
2022年03月30日
ロシアのショイグ国防相は29日、ロシア軍はウクライナで同国側の戦闘能力を大きく損なわせたと強調、今後は親ロシア派武装勢力が一部を実効支配する東部ドンバス地域の戦闘に集中すると述べた。国防省幹部との会議で発言した。 ロシア新興財閥への毒物攻撃否定「情報戦の一部」
ショイグ氏は、「軍事作戦」の最大の目的は「ドンバスの解放だった」と強調した。首都キエフなどでの地上戦が膠着状態に陥っている状況を背景に、親ロ派支配地域に対する支援を優先する戦略上の方針転換を図っているとみられる。 ショイグ氏はまた、ウクライナ軍の航空戦力は既に事実上壊滅したと指摘した。
NATO外相会合へ日本も招待 4月6~7日に開催
2022年03月30日
北大西洋条約機構(NATO)は29日、ブリュッセルの本部で4月6~7日に外相会合を開催し、7日の会合には日本や韓国、オーストラリアなどを招待すると明らかにした。林芳正外相が参加する方向で調整に入っている。ウクライナも招待し、ロシアへの対応で連携強化を確認するとみられる。 ウクライナ、NATO加盟を断念する「中立化」容認 ロシア要求に一定の妥協
NATOによると、7日の会合に日韓豪、ウクライナのほか、フィンランドやジョージア、ニュージーランド、スウェーデン、EUを招待。一部はテレビ会議方式で参加するとみられる。 NATOは今月24日に首脳会議を開催。中国に対し、ロシアへの支援自制を求める共同声明を発表した。
ロシア、ルーブルで国債買い戻し 来月4日償還の20億ドル 財務省発表
2022年03月30日
ロシア財務省は29日、4月4日に償還期日を迎える額面20億ドル(約2500億円)の国債について、ルーブル建てで買い戻す方針を発表した。 【図解】ロシアに対する主な経済制裁 ロイター通信が報じた。ウクライナ侵攻に対する経済制裁として外貨準備の半分近くが凍結され、ドルが不足しており、自国通貨に支払いを切り替える。ただ、通貨を一方的に変更すれば、デフォルト(債務不履行)と見なされる可能性もある。 4月4日の償還は年内のロシアの債務返済で最大規模となる。財務省は、今月30日の期限までに買い戻しに応じる意向を示した債券保有者に対し、額面価格の100%相当をルーブルで支払うとしている。
「適切な水準とは思えず」 経済界から相次ぐ円安懸念
2022年03月30日
前日の海外市場で一時1ドル=125円台まで進んだ円安・ドル高を懸念する発言が29日、経済界から相次いだ。 【図解】日経平均株価の推移 ~1980年から2021年まで~ 経済同友会の桜田謙悟代表幹事(SOMPOホールディングス社長)は同日の記者会見で「現在の水準が適切だとはとても思えない」と強調。円安に伴う輸入コスト増が、燃料高や原材料の価格上昇に拍車を掛け、コロナ禍で苦しむ運輸・飲食業をさらに圧迫していると指摘した。 桜田氏は「国力の弱さや、地政学的危機での強靱(きょうじん)性の低さが円安の背景にあるとすれば、慢性的に悪い影響が及ぶ可能性がある」と懸念。足元の円安は、日米の金利差拡大が直接の要因だが「日本が金利を上げることの最大のリスクは国債の利払いが増えること。(国の)財政が悪化すると円売りが始まる」と、さらなる円安にも警鐘を鳴らした。 一方、日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)も29日の会見で「円安を容認する政策でよいのか。真剣に議論しなければならない」と言及。従来は、円高リスクへの対応が製造業のテーマだった。今回は輸入原材料への支払いがかさんで収益減を招く恐れがある。橋本氏は「円安リスク。これは初めてで大きな課題だ」との考えを示した。
過去最高の1131億円 21年度のスポーツくじ売り上げ
2022年03月30日
日本スポーツ振興センターは29日、スポーツ振興くじ(愛称toto、BIG)の2021年度売り上げが過去最高の1131億4905万200円に上ったと発表した。 【写真特集】スポーツ・奇跡の一枚 16年度の1117億9642万6000円を上回った。 コンピューターが結果をランダムに選択する非予想系くじで、1等最高当せん金12億円のMEGA BIG(メガビッグ)、同6億円のBIG(ビッグ)の売り上げが好調で、合わせて約747億円だった。
時代と逆行して地方で勝負する「農家のコンビニ」コメリ ライバルの農協とも手を組むワケ
2022年03月30日
コロナ禍は、大都市への人流集中を抑制し、「不要不急」とされた店舗ビジネスに制約を課したため、都市部のエンターテインメント産業、外食産業、あるいは大規模商業施設に店を構えるビジネスなどに極めて大きなダメージを及ぼした。その反面、生活必需品を取り扱う小売業とされた食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンターといった業態は「巣ごもり需要」という追い風によって、軒並み増収増益という環境を作り出した。 【画像】コメリの「4大」ビジネスモデル しかし、恩恵を受けたはずの生活必需品を扱う小売業界では、期せずして、大都市マーケットを巡る大再編が起こりつつある。「ニトリ VS DCMホールディングス」の島忠争奪戦、「マツモトキヨシ VS スギホールディングス」のココカラファイン争奪戦、「H2Oリテイリング VS オーケー」の関西スーパー争奪戦など、話題となった事例は、まさに大都市マーケットでのシェアを取り合う有力企業による陣取り合戦だといえる。 なぜ、こうした事態が起こっているのか。コロナの陰に隠れて見えづらくなってはいるが、地方における人口減少、高齢化による市場縮小が着実に進んでいることを、誰もが分かっているからである。大再編が起こっている業種が扱うものは生活必需品であるため、その需要は人口が減れば縮小することを避けられない。「将来人口推計」(社会保障人口問題研究所)などにおいて将来の人口推移予測もなされているので、人口(≒マーケット)が具体的にどのくらい減るのかということも、調べればすぐに分かる。 コロナ禍が去った後に訪れる業績の落ち込みは、“劇薬”ともいえるコロナ禍の影響で持ちこたえていた市場を一気に揺り戻し、縮小市場を巡って苛烈な椅子取りゲームが起こることは避けられないのである。 ただ、見込まれる市場縮小の度合いは全国一律というわけではなく、大都市圏の中心部、首都編でいえば国道16号線内側の人口は2045年になっても今より多いとされる。であれば、今のうちにこの「減らない市場」を確保したいと思うのは当然だろう。その結果、大都市市場の争奪戦が起こっているのであり、これからさらに激化することは容易に想像できる。特に「巣ごもり需要」の恩恵を受けた企業の大半は、追い風のある今が最高業績となる可能性が高く、今は「再編を考えるならここしかない」という環境にある。