ロシア産原油に上限価格、効果は? 「もろ刃の剣」懸念も
2022年12月05日
先進7カ国(G7)と欧州連合(EU)、オーストラリアは5日、海上輸送されるロシア産原油の取引価格に上限を設ける追加制裁を発動する。バイデン米政権が提案した枠組みで、ウクライナに侵攻を続けるロシアのエネルギー収入を減らす狙いがある。ただ、効果を疑問視する声も少なくない。 【図解】対ロシア制裁を実施・表明した国と地域 ―上限価格を設ける目的は。 米国はロシア産原油と石油製品の輸入を禁止した。EUも5日から原油、2023年2月5日から石油製品の輸入を禁止する。EUの禁輸措置発効と同時に、海外輸送されるロシア産原油と石油製品の取引価格を制限して、輸入を禁じていない新興国や途上国との取引を拡大したいロシアに打撃を与えようとしている。 ―G7やEUにとってのメリットは。 原油の国際価格の低下と、それに伴うインフレ抑制を期待している。ロシアは世界3位の産油国で、原油生産全体に占める割合は10%を超える。禁輸措置でロシア産原油を市場から完全に締め出せば、供給不安を背景に国際価格が急騰する恐れがある。G7やEUはロシア産原油の取引価格への管理を強め、値上がりを阻止したい考えだ。 ―G7やEUが取引価格に介入できるの。 世界の海上輸送に欠かせない船舶保険や金融サービスの9割は英国や欧州の金融機関が提供しており、その点でG7とEUは優位に立つ。ロシア産原油の大半はタンカーで輸送されている。輸入業者は英欧の金融機関に対し、取引価格が上限価格を上回らないことを証明する必要がある。上限価格は定期的に見直される。 ―原油取引の上限価格が1バレル=60ドルに決まった。 G7は当初、上限価格を40~60ドルの範囲で低めに設定する厳しい制裁を検討していた。上限価格が低ければロシアにとって不利になる一方、ロシアが報復として原油の生産を止めてしまい、原油の国際価格がはね上がるリスクもある。政治介入による上限価格の設定は、日本を含む世界の景気後退や市場の混乱を招きかねない「もろ刃の剣」だ。このためバイデン政権は最終的に「低過ぎない」水準とするよう求めた。 ―制裁の効果は。 ロシア産原油の主要消費国であるインドや中国は制裁に参加せず、独自に船舶保険をかけて取引を続ける方針を示しており、一部の専門家は制裁の効果に懐疑的だ。ロシアは「制裁参加国に石油を売るつもりはない」(ノバク副首相)と報復を警告したこともあり、G7の期待ほど協力国は増えなかった。
