最高級ブランド「大間まぐろ」に何が起きているのか? 揺るがぬ評価、続く混乱
2023年03月13日
「国産」「天然」「生」のクロマグロの中でも最高級とされる青森県の「大間まぐろ」。東京・豊洲市場(江東区)の初競りでは毎年「一番マグロ」として高値を付けることで知られるが、ここへきて漁獲報告を行わなかったことで水産業者が逮捕・起訴されたり、大間沖で取ったマグロでなくてもブランドとして認定するよう条件を緩和したりと、一大産地の混乱が続いている。それでも、市場や消費者には「大間が1番」との評価は揺るぎない。日本随一のブランドに今、何が起きているのか。(時事通信水産部長 川本大吾) 【写真】初競り以外の豊洲市場のマグロの競りでは、大間産が最高値でないこともしばしば 今年2月上旬、マグロを漁獲したものの、その一部を青森県へ報告しなかったとして、大間町の水産業者2人が漁業法違反の容疑で逮捕され、3月10日に起訴された。さらに、大間などの漁業者22人も同法違反罪で略式起訴された。起訴状によると、2021年夏に漁業者らと共謀し、マグロ漁獲量約74トンを県に報告しなかったとされる。 今回の事件は、産地偽装や「密漁」というわけではない。ただ、クロマグロは国際的な管理下に置かれている魚種で、資源評価の上で管理策が敷かれており、国内ではシーズンに応じて漁法や都道府県ごとに漁獲上限が定められている。この上限を守るのに必要なのが、漁業者による漁獲報告。怠れば資源管理の根本が揺らぐ。乱獲によりマグロが減れば、そのツケは大間の漁師だけの問題ではなくなる。資源状況によっては、県外や外国漁船にも影響が出かねない。 関わった漁業者が22人と多く、無報告による「脇売り」が常態化していたとの見方もある。ルール違反の横行に、有識者からは日本の漁業管理策や罰則が「甘すぎる」との指摘もあり、規制の厳格化を求める声は多い。 ◆大間沖で漁獲しなくても「大間まぐろ」 「大間まぐろ」ブランドの認定でも大きな動きがあった。大間漁協は昨年秋、商標登録の条件を「大間沖で漁獲されるマグロ」から「大間の港に水揚げされ、荷受けされたマグロ」に変更し、特許庁に再出願した。これまで同漁協は、大間沖の津軽海峡で、一本釣りとはえ縄漁で取ったマグロを「大間まぐろ」として出荷してきた。 しかし近年、秋から冬のマグロ漁場が津軽海峡よりも東側の太平洋沖に形成される傾向が強まり、津軽海峡での漁獲が低調になった。大間漁協は「大間沖という漁場にこだわっていては、ブランド認定のステッカーを張って出荷するマグロが少なくなってしまう」(漁協関係者)と危機感を募らせ、漁場をブランドの要件としないことにした。 国産の生鮮魚介類の原産地表示については、原則として漁場、もしくは水揚げ港か都道府県名を記載できる。例えば、太平洋で取ったマグロでも、大間港で揚がれば「大間産」と表示することに問題はない。各地の小売店でも、魚パックに「○○産」と漁港や地名が表記されているが、決してその港の沖で取られた魚ばかりではない。 ただ、「大間まぐろ」は他産地とは桁違いの有名ブランドだけに、豊洲市場関係者からは「漁場をブランド条件から外すのは残念」との声も聞かれる。その一方で、「たとえ津軽海峡で取ったマグロでなくても大間で水揚げしたのなら、他の漁港と同じように、漁港の名称で流通させたらいいのではないか」(同市場仲卸)と肯定的な意見もある。
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