不正診断の事故死疑い患者 「服薬支援成功例」と学会発表 大阪病院

カテゴリー/ フリースペース |投稿者/ ビレンワークアップ
2019年12月29日

結核治療の拠点施設「大阪病院」(大阪府寝屋川市)が、身寄りのない男性入院患者の死因を不正に肺結核と診断しながら、今年6月の日本結核病学会総会で服薬支援の成功例として発表していた。男性は2年前に入浴中の事故で亡くなった疑いがあるが、発表では死亡した事実を明かしていない。専門家から「非常識で医療モラルに欠ける」と批判が出ているが、病院は「男性に生前、同意を得たので問題ない」としている。

【食い違う病院の説明とカルテ】不正死亡診断の主な経緯

 ◇当時の副院長ら「患者に寄り添った支援」強調

 同学会は年に1度、総会を開催。今年は6月上旬に大分市内で開かれ、各地の専門医や看護師らが研究成果などを報告した。

 毎日新聞が入手した資料によると、大阪病院が発表した演題は「服薬困難患者への服薬支援方法の検討」。副院長や事故当時の看護部長、看護師長らが発表者に名を連ね、2017年10月に急死し、死因を不正に肺結核とされた堂園輝雄さん(当時72歳)の症例を「A氏」と匿名で取り上げていた。

 病院側の発表内容によると、17年6月に入院した堂園さんには軽度の認知症状があった。治療を始めた当初、看護師が個別に抗結核薬の服薬を確認する支援を取り入れたが、嘔吐(おうと)が続き、堂園さんは服薬を頻繁に拒んだ。

 薬への苦手意識など精神的な要因が考えられたため、他の結核患者とともに集団で服薬を促す支援に切り替えると、薬を飲めるようになったと学会で説明。「患者に寄り添った支援が服薬の意欲向上につながる」と成果を強調していた。

 堂園さんの肺結核は回復傾向にあったが、病棟浴室の浴槽内で心肺停止の状態で発見され、翌日に死亡した。看護師の入浴支援の連携ミスによる事故死が疑われたが、医師が遺体を詳しく調べず、死因を肺結核と診断した。

 ◇「現場で適切に手続きしており、発表に問題はなかった」と主張

 副院長や看護部長らは堂園さんが死亡した経緯を把握しながら、症例を学会で報告していた。病院側は、この発表が堂園さんの症例だと認めた上で「学会から17年に、服薬困難な患者の対応事例があれば報告してほしいと依頼された」と説明。昨年の学会報告に間に合わず、今年の発表になったという。発表資料は堂園さんが死亡した経緯なども記されたカルテを基に作られたが、死亡については触れなかった。

 病院によると、学会発表への同意は、看護師長が堂園さんに口頭で確認した。病院の事務部長は「現場で適切に手続きしており、発表に問題はなかった」との認識を示したが、同意を巡る内部文書を残す必要はなく、堂園さんから承諾を得た時期は不明だという。

 日本結核病学会の藤田明理事長は取材に「当学会は直接の当事者ではないためコメントする立場にはない」と書面で回答した。【近藤大介、遠藤浩二】

 ◇事故死疑い把握し「学会発表する姿勢は医療モラルに欠ける」

 ◇医療ガバナンス研究所の上昌広理事長

 医療機関の危機管理に詳しいNPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長の話 患者が事故死した疑いを把握していたのに、学会で発表する姿勢は医療モラルに欠けている。学会で症例報告する場合、患者や遺族と信頼関係を築けているかが重要だ。大阪病院は患者から生前に同意を得たと言うが、死亡診断書が不正に作成されていた経緯などを考えると、同意の前提が崩れていたと言える。また、都合の悪い情報を隠したまま症例報告すれば、発表内容に疑念を持たれかねない。

 
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