税理士は見た「新型コロナ」確定申告に落とす影

カテゴリー/ その他 |投稿者/ ビレンワークアップ
2020年04月06日

2019年分の確定申告は、新型コロナウイルスの感染拡大対策として、期限が4月16日まで延長になりましたが、その猛威は確定申告の現場や個人事業主の申告にも大きな影響を与えています。税理士の広田龍介さんのリポートです。【毎日新聞経済プレミア】

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年の確定申告の期限は1カ月延長されて4月16日になった。11年の東日本大震災で、被災者を対象に期間を延長した例はあるが、全国一律延長は今回が初めてだ。

 確定申告時期の税務署は人でごった返すような込み具合になる。期間延長は混雑緩和を図り、感染拡大の防止につなげる狙いがある。だが、新型コロナウイルスの猛威は、確定申告の現場や個人事業主の申告自体にも大きな影響を与えている。

 ◇公示地価は「昨年の数字」に

 「売却はグッドタイミングだったようだ」。昨年、不動産を売却し、今回その譲渡所得などの確定申告を済ませたAさんは胸をなでおろしている。

 国土交通省は3月18日、公示地価を公表した。東京圏では、商業地で昨年比5.2%、住宅地では同1.4%それぞれ上昇し、「7年連続の上昇」と報じられた。

 しかし、これは1月1日時点、つまりほぼ「昨年の実績」であり、その後の新型コロナウイルスによる影響は反映されていない。深刻な景気後退も現実味を増すなか、Aさんは「地価への影響もが大きいだろう」と話す。

 ◇年1回の「顔合わせ」も変化

 確定申告の現場でも、慎重な対応が続く。一部の税務署では、感染者が申告相談や総合窓口に訪れたことが明らかになった。3月までに、埼玉県の春日部、越谷、茨城県の太田、千葉県の市川、大阪府の堺、京都市の下京、高知県の須崎の各税務署では窓口業務を一時中断した。

 税理士事務所では、確定申告に必要な資料などの受け渡しや、完成した申告書の内容説明などは、顧客と直接相対で行うのが通例だ。年1回の申告時期に「フェイス・トゥ・フェイス」で1年間の情報交換を行うという意味合いもある。

 しかし、今回はお互いにできるだけ外出を控える方向で手続きを進め、メールや郵送・宅配便、電話でのやりとりが多くなった。面会で移動する場合も、電車やバスはできるだけ避け、車を使うことが多かったようだ。

 申告期限の延長は、気持ちの上では楽になったものの、むしろ、できるだけ早くできるように申告作業を進めることになった。

 万一、税理士事務所やそれが入居するビルの中で感染者が発生すれば、少なくとも2週間の閉鎖は覚悟しなければならない。そうしたリスク管理を考えながら、各税理士事務所は日々、申告作業と向き合っている。

 ◇青色申告「3年繰り越し」も出口見えず

 顧客の個人事業主らからは、事業への打撃を恐れる声が上がる。

 「客の入りが急激に減っている」。こう嘆くのは個人飲食店を経営するFさんだ。このところ、海外から観光に訪れた外国人旅行者(インバウンド)効果で売り上げを伸ばしてきたが、渡航の禁止や制限が始まってから赤字が続く。

 Fさんは青色申告者であるため、事業で損失(赤字)が出た場合、その金額を翌年以降、最長3年間繰り越すことができる。翌年以降に黒字化して所得が発生すれば、その金額から損失分を差し引くことができ、そのぶん納税額は減らすことができる。

 こうした繰り越し控除があるため、これまでは、たとえ赤字になったとしても「また頑張ろう」という気になれた。だが、今回のように出口が見えない状況では「頑張りようがない」と話す。

 重荷になるのは、主に人件費だ。このまま売り上げが上がらなければ、従業員の雇用を続けることはできそうもない。自身の老後生活を考えれば、廃業も視野に入ってきたという。

 一方、賃貸アパートを経営するSさんは、入居者に感染者が発生した場合の対応が気がかりだ。アパートの入り口に消毒液を用意し、入居者に消毒や手洗いを呼びかけているが、個人事業主としてできる手立ては限られている。「万一感染が拡大したらどうしようかと不安だ」

 とにかく、一日も早い収束を願うばかりだ。

 
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