「EV大国・中国」は幻想?実は普及が進まない現状
2020年11月30日
中国の自動車関係団体が、電気自動車(EV)など環境対応車(中国では新エネルギー車=NEV)の大胆な普及目標を打ち出し、波紋を広げている。【毎日新聞経済プレミア・小倉祥徳】 中国政府は二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減や自国の自動車産業の強化を目指している。EV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)をNEVとして区分し、補助金政策で普及を促している。ハイブリッド車(HV)はNEVに含まないが、CO2排出削減対象の「低燃費車」として優遇している。 中国でNEVの販売は足元で苦戦しているだけに、環境対応の実現は容易ではない。今回打ち出した目標に実現性はあるのだろうか。 「2035年までにNEVの販売比率を50%以上に高める」「伝統的な動力(エンジン車)に占めるHVの割合を100%にする」――。 中国の自動車専門家団体「中国自動車エンジニア学会」の李駿理事長は10月下旬、上海市内で開かれた業界イベントで35年までの電動車目標を発表した。同学会はEVやFCVなどのNEVが新車販売に占める割合を25年に20%前後、35年に50%以上に高める方針を示した。 NEV以外のエンジン車のうち、HVの割合は25年に50%、35年に100%とした。35年にはエンジンだけの車は販売できないことになる。同学会は目標の策定に当たり、中国工業情報省の指導を受けたと説明している。 欧州ではエンジン車の新車販売を英国は30年、フランスは40年に禁止する方針。英国は従来の35年を30年に前倒ししたが、中国の目標は、これらの先進国にほぼ並ぶことになる。 ◇習主席はCO2削減目指すが NEVの普及は、中国政府が注力する政策だ。中国は世界最大の温室効果ガス排出国で、習近平国家主席は9月の国連総会で「30年までにCO2排出量を減少に転じさせ、60年までに(CO2排出量を実質ゼロとする)カーボンニュートラル達成を目指して努力する」と表明した。 11月3日に公表した中国政府の35年までの長期目標の基本方針には、30年までに排出量をピークに持っていくための行動案が示され、低炭素社会の実現を加速する方針が盛り込まれている。EVなどの普及は目標達成のカギを握るとみられる。 さらに中国政府には、EVなどの普及を通じて「自動車強国」を目指す思惑もある。従来のエンジンは複数の部品を組み合わせる「すり合わせ」技術が不可欠で、長年の技術的蓄積と部品供給網を確立した日本や欧米の自動車メーカーに追いつくのは容易ではない。 一方、NEVの動力となるモーターは、部品が少なく製造も容易で、比亜迪(BYD)など国内の専業メーカーが成長しつつある。 ◇実は順調でないEV販売 だが、中国でEVを中心とするNEVの販売は決して順調ではない。19年の販売台数は約120万台と、世界の半分以上を占めるが、当局の購入補助金の縮小や相次ぐ発火事故を受けて前年からは4%減少した。自動車市場全体に占める割合も5%程度にとどまる。 20年には再び購入補助金が拡充されたが、1~10月の累計販売は前年同期比7%減で、市場に占める割合も19年と比べて横ばい。補助金の縮小だけでなく、EVの充電時間の長さや走行距離の短さなども普及のネックになっている模様だ。 実際、政府が11月2日に発表したNEVの普及計画を見ると、25年のNEVの販売比率は専門家団体と同じ20%だったが、35年は「EVを販売の主流にする」との表記にとどまった。25年の目標についても、計画策定中の19年には25%とする案があっただけに、従来より慎重になったともいえる。 一方、11月11日に北京市内で開かれた業界イベントでは、別の自動車専門家団体が、条件付きの自動運転車を25年をめどに全体の50%以上、30年までに70%へと高める工程表を発表した。こちらも工業情報省の指導を受けて作成したとしているが、高度なシステムの開発と高額と予想される販売価格が壁となりそうだ。 高い目標を掲げた中国のNEVと自動運転は、現実に越えるべきハードルが高い。 とはいえ、EVや自動運転など次世代自動車の技術革新は日々進んでおり、世界最大の自動車市場である中国で一気に大量生産が始まれば、コスト問題も解決に向かうかもしれない。日本はじめ各国の自動車メーカーにも大きな影響を与えるだけに、中国の自動車産業からは目が離せない状況が続きそうだ。
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