ワクチン職場接種続く模索 副反応対応は 打たない従業員差別の恐れも
2021年06月03日
新型コロナウイルスワクチンの職場接種が21日から可能になった。接種券も不要で現役世代の早期接種に期待は高まるが、接種人数が限られる小規模での実施は難しく、中小企業などは複数で集まって実施する必要があるとみられる。検討を進める大企業からは、副反応時の対応を懸念する声もある。環境が整備できても、接種を希望しない従業員への差別や雇用形態での線引きなどにも注意を払う必要がある。 厚生労働省は産業医による社内診療所での実施、外部の委託機関による会議室などでの実施、提携先の医療機関での実施を想定している。今回用いるのは米モデルナ製ワクチンで、米ファイザー製を使う高齢者接種に影響を与えない。 モデルナ製の最小流通単位は1箱100回分だが、厚労省の担当者は「1人2回の50人程度など、少なすぎる接種人数の所が乱立してしまうと収拾がつかない」との見方を示す。50人程度の接種は大規模接種会場では2時間程度で終了するという。政府は接種率の上昇を目指しており、1カ所当たりの規模が重要になる。 厚労省によると、ワクチン接種の事業主体は市区町村で、企業側は副反応が発生した場合などに救済を受けるために自治体と契約して委託を受ける必要があり、同省は詳細を詰めている。契約を結べば、厚労省が運用するワクチンの配送、接種実績を管理する「V-SYS(ブイシス)」への登録が可能になり、ワクチンの供給を受けられるようになる。 企業側は国が確保した保管用冷凍庫の配送を受けてワクチンを保管し、リハーサルなどの準備や接種事務を自前で行う。企業側の負担を考慮すると、接種を希望する人数が少ない場合には、実施は現実的ではないという。 中小企業には社内診療所がなく、産業医がいない所もある。国は商工会議所などを通じた共同実施を想定するが、医療従事者の確保が課題になる。企業に医師らを派遣してワクチン接種を提供する外部機関の利用も考えられ、インフルエンザの予防接種で実績がある日本予防医学協会の担当者は「(職場接種が発表された)1日だけで企業から10件以上の問い合わせがあった」と話す。 同協会ではインフルエンザであれば、医師1人と看護師2人の3人体制で午前から夕方までに200人程度の接種が可能だという。ただ、派遣する医師や看護師らは登録制で掛け持ちのケースもあり、「自治体での高齢者接種と競合し、医療従事者の確保が困難な可能性がある」と話した。 一方で、大企業では職場接種に関心を持つものの、副反応の発生時への対応に懸念を示す所もある。 金融大手の担当者は「国が職場接種をどのような形で進めていくのか、情報を待っている」とした上で「産業医とも相談しているが、現状では重い副反応が起きた場合に対応できる設備がない」と話した。また、5000人以上の従業員を抱えるインフラ大手も検討を進めるが、「副反応を想定した要員の増強が必要で、搬送先の病院も確保しておきたい」という。 実施のめどが立っても、接種は従業員の希望に基づき企業側が強制はできない。職場などで、接種の有無で差別やハラスメントが起きる恐れもあり注意が必要になる。また、接種対象についても正社員、非正規社員、アルバイトなどの雇用形態で異なれば、不公平感が生じることになる。 日本産業衛生学会理事で東京工科大の五十嵐千代教授(産業保健学)は「専属の産業医がいる大企業であれば保健師もいるので実施しやすいだろう。副反応が重ければ救急車を呼ぶしかないが、危機管理は重要でマニュアルなども必要になるだろう」との見方を示した。
「衆院選、秋の公算大 首相と公明代表、今国会延長せず」
