恒大「野望の象徴」10万人スタジアムの現場 作業員「飢え死にだ」
2021年10月25日
「もう3カ月も給料が支払われていない」 「連行するならそうしろ、自分で働いたカネを求めて何が悪い」 【写真】中国恒大集団の創業者・許家印氏が生まれ育った家の門=2021年9月26日、河南省聚台崗村、井上亮撮影 20日午後、広州市中心部から南へ車で約30分。中国の不動産大手・中国恒大集団が、「世界一」を目指して建設を進めてきたサッカースタジアムの建設現場に行くと、約30人の建設作業員が事務所前に押し寄せていた。 作業員たちは事務所から現場責任者とみられる人物を帰らせないように、体を張って出入り口を封鎖していた。 かけつけた警官も当初は、道路を塞ぐのは法律違反だと顔を真っ赤にして取り締まる勢いだった。 しかし、あるピンク色のシャツを着た作業員は「俺たちは出稼ぎの農民工だ。政府のお前たちが給料を補償してくれ。でないとここで飢え死にする」と引き下がらない。 すぐ後ろの壁には「歓迎 共産党100年」のスローガン。警官は9人にまで増えたが、男たちの怒りを収めるためか、少し距離を置いて監視する方法に切り替えた。 このスタジアムは、拡大路線を突き進んできた恒大の「野望の象徴」だった。 中国共産党機関紙・人民日報の昨年7月の報道によると、建築面積は約30万平方メートルで、収容観客数は10万人だ。 広州市都市計画委員会が全会一致でスタジアム計画を承認し、「世界最大規模、最高のグレード、最も優れた科学技術を取り入れた国際的なプロサッカースタジアム」が2022年末までにオープンすると宣伝していた。 米、英、ドイツ、オーストラリアなど8カ国の有名な設計士に依頼し、最終的に米国案に決まった。 しかし、その計画が暗転するまで1年もたたなかった。 工事関係者によると、建設資金が支払われなくなり、今年6月から工事が実質的に止まっているという。恒大の経営危機が表面化した9月より3カ月も前のことだ。 建設現場では、約10本の巨大なクレーンが天に向かって立っているが、動いていない。 赤茶色にさびた建設資材が積み上げられ、白いコンクリートがむき出しになったスタジアムで作業をしている人の姿は見当たらなかった。
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