ハロウィンの起源はここ、アイルランド「悪魔の洞窟」
2021年10月31日
古代ケルトの伝説が息づく遺跡、世界遺産にも推薦中

アイルランド、ラスクロハンにあるオエンナガット洞窟。古代ケルトにおいて中心的な役割を担っていたとは信じ難いほど控えめなたたずまいだ。悪魔が暮らす地下世界の入り口、ハロウィンの起源であるサウィン祭の発祥地として知られる。(RONAN O’CONNELL)
アイルランドの何でもなさそうな野原に大きな塚がある。今は羊たちが自由に歩き回っているが、2000年前なら恐怖におののいていたかもしれない。近くのオエンナガット洞窟に住むケルトの悪魔に、いけにえとしてささげられるためだ。 ギャラリー:100年前のハロウィン 写真7点 アイルランドの考古学者ダニエル・カーリー氏によれば、古代ケルト人はオエンナガット(ネコの洞窟の意)を、悪魔が暮らす「あの世」とアイルランドとを結ぶ通路と考えていた。そしてこの洞窟のほか一帯の遺跡群「ラスクロハン」は、ハロウィンの起源であるサウィン祭の発祥地だという。 カーリー氏は古代アイルランドのコノート王国の拠点だったラスクロハンの専門家だ。ラスクロハンの中心にある巨大な塚ではサウィン祭の時代、異教徒の壮大な神殿で動物がいけにえとしてささげられていた。ハロウィンの起源は、現在のような子供向けのイベントとは程遠く、ラスクロハンで行われていた血みどろの不気味な儀式にあるのだ。 アイルランドは現在、ラスクロハンをユネスコの世界遺産に登録することを目指している。そのため、ロスコモン県の農地に埋もれる、謎に包まれた5500年前のケルト人の拠点を、科学者や歴史学者が時間をかけて解読しつつある。
ハロウィンの起源とされる祭り
約6.5平方キロの豊かな農地に広がるラスクロハンには、240の遺跡がある。墳丘墓、円形のとりで、巨石記念物、線状の土塁、鉄器時代の聖域、そして、「地獄の門」と呼ばれるオエンナガットだ。 2000年以上前、ケルト人の間で自然崇拝が主流だったころ、ケルトの新年の祝いであるサウィン祭がラスクロハンで生まれたとカーリー氏は話す。お菓子を大量消費する現代のハロウィンに姿を変えたのは、1800年代にアイルランド系移民がサウィン祭の伝統を米国に持ち込んでからだ。 カナダ、マギル大学の准教授で、アイルランドの民俗学を専門とするドロシー・ブレイ氏は、ケルト人は1年を夏と冬に分け、その中に4つの祝祭があったと説明する。2月1日は羊の出産シーズンに合わせた春の祭り「インボルク」、5月1日は冬の終わりを告げる日「ベルテイン」で、露で顔を洗う、最初に咲いた花を摘む、装飾した木の周りで踊るといった習慣があった。8月1日の「ルーナサ」には、ケルトの王が司り、ルー神にささげる収穫祭が行われていた。そして、10月31日のサウィン祭で牧畜の1年が終わり、新しい1年が始まった。 ラスクロハンは町ではなかった。コノート王国には都市と呼べる中心地がなく、散在する田舎の土地で構成されていたためだ。ラスクロハンは王国の集会所であり、これらの祭りの重要な会場でもあった。特にサウィン祭の時期には、高台にある神殿を中心とした「活動の場」となり、神殿の周りにはコノートの有力者たちの埋葬地があった。 埋葬されている特権階級の人々がラスクロハンに住んでいた可能性もある。下層階級の人々は分散した農場に暮らし、祭りのときだけラスクロハンにやって来た。祭りは活気にあふれ、交易、宴会、贈りものの交換、ゲーム、縁談、戦争や平和の宣言が行われた。 また、儀式のためのささげものも行われた。ラスクロハンのツアーガイドで当地に関する著作もあるマイク・マッカーシー氏によると、ささげものはアイルランドの地下世界の魂に向けられたものだという。ティル・ナ・ノーグとも呼ばれるその謎めいた地下世界には、ケルトの悪魔やレプラコーンをはじめとする妖精たちが暮らしていた。サウィン祭のとき、これらの悪魔の一部がオエンナガット洞窟を通って脱出した。 「サウィン祭はこの世とあの世の見えない壁が消えるときでした」とマッカーシー氏は説明する。「恐ろしい異界のけだものたちが現れ、周りの風景を破壊し、冬に備えたのです」 ケルトの人々は彼らが農作業を手伝ってくれることに感謝しながらも、怒りを買うことを恐れ、丘の上や畑に儀式用の火をともして身を守った。悪魔が住む世界に引きずり込まれないよう、人々は悪魔の仲間であるグールに変装したとマッカーシー氏は話す。それから2000年のときを経て、世界中の子供たちがハロウィンにこの伝統を守っている。 これらの魅力的な伝説、そして、その伝説が息づく広大な遺跡があるにもかかわらず、ラスクロハンを車で通過しても、放牧場しか見当たらない。1万年以上前から人が居住していたアイルランドは歴史的遺跡が非常に多いが、その多くはほとんど、あるいは全く知られていない。何世紀も前に放棄された後、自然にゆっくり取り込まれ、地中に隠れている遺跡もある。 ラスクロハンもその一つで、まだ発掘されていないものとしてはヨーロッパで最大の王家の遺跡とも言われている。ラスクロハンは一度も掘り起こされていないだけでなく、記録に残されているアイルランドの歴史より古い。 アイルランドの人々は何世紀も前から、この場所にラスクロハンがあると信じていたが、アイルランドの研究チームがリモートセンシング技術を使い、地中にある考古学的な秘密を明らかにしたのは1990年代に入ってからだ。 「ラスクロハンで用いられてきた手法の素晴らしい点は、破壊を伴わず、土のモニュメントをいくつも発見していることです」とカーリー氏は話す。「(そして今)ターゲットを絞った発掘が可能になりました。発掘に付きもののダメージを抑えながら、研究課題に答えることができるでしょう」
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