コロナ前回復、不透明 オミクロン拡大で景気急失速へ〔深層探訪〕
2022年02月19日
2021年10~12月期の実質GDP(国内総生産)速報値は、年率換算で前期比5.4%増と2四半期ぶりのプラス成長となった。実額では541兆円と新型コロナウイルス感染拡大前の19年同期にあと1兆円弱と迫る。ただ、年明け以降の変異株「オミクロン株」流行で景気の急失速は避けられない。21年度中にコロナ前への回復を目指す政府目標の達成は不透明な情勢だ。 【図解】実質GDPの推移 ◇伊香保温泉「耐えしのぶ」 「まん延防止等重点措置が出て、客足は全然だめになった」。首都圏の観光客が訪れる群馬県渋川市の伊香保温泉で地元観光協会の常務理事を務める伊藤信明さんは肩を落とす。昨年9月いっぱいで緊急事態宣言が全面解除され、宿泊者数が持ち直していたが、今年1月21日から群馬県にも重点措置が適用。平日休業する旅館も出ており、ある旅館のマネジャーは「3月6日まで重点措置が延長され大ダメージ。耐えしのぶしかない」と話す。 21年10~12月期に急回復した外食や旅行などは再び逆風にさらされている。飲食店の予約サービス「テーブルチェック」によると、2月7~13日の1店舗当たりの平均来店客数は1日20人止まりで、40人台に回復した昨年12月から半減。居酒屋大手ワタミの渡辺美樹会長兼社長は、先行きについて「非常に悲観的だ。(感染の波は)6、7月にもう一度来るだろう」と話す。 感染力の強いオミクロン株のまん延は製造業の生産活動にも影を落とす。自動車各社は自社工場や部品メーカーでの感染続出で断続的に操業がストップし、サプライチェーン(供給網)混乱で夏場以降に落ち込んだ生産の挽回が進まない。22年3月期の世界生産台数を50万台引き下げ850万台としたトヨタ自動車は「感染拡大や半導体需給の逼迫(ひっぱく)で先が見通しにくい」と説明する。 ◇「悪い物価上昇」足かせ 原材料費の高騰を受けて相次ぐ食料品や日用品の値上げも景気回復の足かせだ。衣料用洗剤や紙おむつの値上げ方針を明らかにした花王の長谷部佳宏社長は「あらゆる手段を尽くして値上げする。昨今の原料高は今までと次元が違う」と強調する。 内閣府は、エネルギー価格上昇や食料品の値上げで21年の家計負担は前年比2万7000~3万9000円程度増えたと試算。コストプッシュ型の「悪い物価上昇」が家計の購買力低下につながり、消費は一段と冷え込む恐れがある。 景気後退と物価高が同時進行する「スタグフレーション」の回避には、賃金上昇の勢いがカギを握る。「成長と分配の好循環」を目指す岸田文雄首相は、22年春闘で好業績企業に「3%超」の賃上げを期待。しかし、第一生命経済研究所は先行き不透明感が強い中での賃上げ率は1.98%にとどまり「物価上昇に追い付かない可能性がある」(新家義貴主席エコノミスト)と予想する。 ◇米欧に大きく遅れ 22年1~3月期の実質GDP成長率について、ニッセイ基礎研究所は前期比年率0%台と予測し、「行動制限が長期化すればマイナス成長に陥る」(斎藤太郎経済調査部長)と指摘。コロナ前水準への回復は4~6月期にずれ込むとみる。 米国のGDPは21年4~6月期にコロナ前を超え、ユーロ圏も10~12月期に到達しており、日本の回復の遅れが目立つ。岸田政権には先進7カ国(G7)で最低水準にとどまるワクチンの3回目接種を加速し、経済活動と感染防止を両立させる取り組みが求められる。
「ガソリン補助、上限引き上げへ 政府方針、ウクライナ緊迫化で」
「カナダ首都、デモ排除開始 コロナ規制に抗議、70人拘束」
