海外で稼ぐ構図に暗雲 米中泥沼化で世界減速リスク

カテゴリー/ フリースペース |投稿者/ ビレンワークアップ
2019年08月09日

令和元年上期の経常収支は、米中貿易摩擦の影響で貿易黒字が大幅に縮小したものの、海外子会社からの配当金などの「第1次所得収支」が全体を押し上げ黒字を保った。ただ、足元では米中摩擦がさらに泥沼化。世界経済が減速するリスクが高まっており、日本の「海外で稼ぐ」という構図にも暗雲が漂い始めている。

 「輸出」で稼ぐというイメージが根強い日本だが、リーマン・ショックのあった2008年以降の貿易黒字は小幅で、赤字に陥ることも少なくない。その代替として増えているのが、第1次所得収支だ。

 大和総研の小林俊介シニアエコノミストは「たびたび急激な円高に見舞われたことや、新興国の台頭などを背景に、日本で製造して輸出するのではなく、日本企業が直接海外に進出し、現地生産するように変わってきている」と話す。

 子会社などを通じて「海外で稼ぐ」スタイルで新興国の成長を取り込んできた日本だが、この構図にもリスクはある。海外の経済が減速した場合、その影響は、海外子会社の経営を悪化させることで日本企業にも直接的に及ぶようになるからだ。

 実際、足元では海外経済の減速懸念が高まっている。トランプ米大統領は今月に入り、中国からの輸入品に対する制裁関税「第4弾」の9月発動を表明、さらに中国を「為替操作国」にも指定した。中国も報復として米農産品の購入停止を発表するなど、米中対立は再び激化している。

 第4弾の対象には消費財が幅広く含まれていることから、中国だけでなく米経済への悪影響も懸念されており、世界1位と2位の経済大国の景気が減速に向かえば、世界経済への影響は必至だ。

 さらに、韓国向け輸出管理の厳格化をきっかけとした日韓関係の緊迫化も、今後の経常収支を押し下げる要因になりそうだ。訪日客全体の2割を占める韓国からの訪日客が減り、「旅行収支」の伸びが鈍化しかねないからだ。海外経済の減速に伴う訪日客の減少と合わされば、事態はより深刻なものとなる。

 旅行収支は外国人旅行者が国内で使う金額から、日本人が海外で支払う金額を差し引いて算出。訪日外国人の増加に伴い平成26年下期に黒字転換して以降、黒字幅は拡大傾向にあり、この上期も前年同期比2・7%増の1兆3199億円の黒字で、経常収支を大きく押し上げている。(蕎麦谷里志

 
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