トラック事故死「年間400人超」 ドライバー頼みの安全対策すぐ止めて、運送業界はAIに投資せよ
2023年02月24日
トラック運送業界の現状

トラックのイメージ(画像:写真AC)
運送業界、特にトラックの安全性の改善は急務であり、全日本トラック協会も「安全は最重要課題」であると、その重要性を説いている。 【画像】「えっ…!」 これがトラック運転手の「年収」です(16枚) 筆者(山下駿、自動車ライター)は10年以上にわたって自動車業界で働いており、現在では、総括安全衛生管理者として社員への交通危険予知、事故事例にもとづく事故予防手段の指導をしている。それらの経験と知識をもとに、現在トラック運送業界が抱えている問題やその対策案について考えてみたい。 近年、コロナ禍の影響もあり、宅配の需要による物流の活性化は加速度的に進んだ。 国内の物流事業の市場規模は約29兆円。その中でトラック運送事業の営業収入は2018年時点で19兆円と、全体の6割を超えている。まさに、トラックが国内の物流を支えていると言っても過言ではない。 しかしそんな現状とは裏腹に、現在、トラック運送業界は多くの問題に直面している。 ・重大事故が多い ・ドライバーの人員不足 ・過酷な労働環境 ・ガソリン価格の高騰 ・競合他社の増加による利益率の低迷 などである。筆者は、これらの中でも「重大事故が多いこと」が、トラック運送業界が抱えている最も大きな問題と考えている。
最大の課題は安全性向上

重大事故の発生状況(画像:国土交通省)
なぜ、トラック運送業界の最大の問題が、重大事故が多いことなのか。その理由はシンプルで、人命に直接、そして大きく関わることだからだ。つまり、最も早く達成すべきは安全性の向上である、ということだ。 表を見てほしい。この表からは、トラック事故による年間の死者数が418人(2020年)で、他の自動車事故の死者数より圧倒的に多いことが分かる。そして、重大事故になった際の死者数の割合も、トラックは非常に高い。重大事故発生時の死者割合は、バス全体(乗合、貸切、特定)では約1%、ハイヤー・タクシーでは約10%なのに対して、トラックでは25%以上だ。この結果を見るだけでも、トラック運送業界の最大の課題が安全性の向上である、と言い切っていいのではないだろうか。 人命の問題に加え、事業者の立場から考えてみても、事故によってかかるコストは甚大だ。人的損害や物的損害に加えて、ニュースなどで取り上げられれば、社会的信用にも影響が及ぶ。このことからも、事業者も安全性の向上を最大の課題として取り組むべきだと言えるだろう。 このような話をすると、「事故を防ぐには、運転手が安全運転を心がければいいのではないか」という議論になることがある。実際、事故を直接引き起こしている(もちろん、「もらい事故」もあるが)のはドライバーなので、そのような話になるのかもしれない。しかし、トラックドライバーが業務中、最も意識しているのは安全だ。これは筆者が長年業界で過ごしてきた経験から、確信を持って言える。誰しも自分の命が大切なので、それをおろそかにしたいと思うドライバーなどいないのだ。 ただ、多くのドライバーが細心の注意を払っていても、トラックによる事故は後を絶たない。つまりここには、「安全運転の心がけ」だけではどうにもできない要因が隠されていると言えるだろう。
