倒壊した自宅、こぼれるため息「安平に住みたかった」
2019年09月06日
北海道地震で大きな揺れに見舞われた郡部の町で、人口流出が進んでいる。家屋が大きく壊れ、やむなく町外に住む場所を求める人も少なくない。「帰りたいが、帰る家がない」。被災した人たちは、複雑な思いを胸に発生から1年を迎えた。
【写真】グループホームで妻と暮らす更科弘幸さん。先祖を供養する場所がほしいと小さな仏壇を購入した=2019年9月2日、北海道苫小牧市、日吉健吾撮影
「町での生活や仲間が懐かしくて、忘れられない。帰りたいが家を建てる資金もないし、諦めるしかないのかな、と思う」
北海道安平(あびら)町から転出し、現在は苫小牧市のグループホームに住む更科弘幸さん(86)、孝子さん(88)夫妻はため息をつく。
昨年9月6日、町内の自宅にいた更科さん夫妻は、大きな揺れで目が覚めた。弘幸さんが懐中電灯を探しに布団を出ると、数分前まで寝ていた場所に、仏壇が倒れてきた。自宅は地盤から傾き、ドアは閉まらず壁紙もはがれ、住める状態ではなかった。約30キロ離れた苫小牧市の長女を頼り、地震翌日、孫が1人で住んでいた家に避難。自宅は公費解体することになった。
安平町は札幌市の南東約50キロにあり、人口約7800人。酪農が盛んで、全国初の本格的なチーズ製造工場が造られたとされる。地震では、豊かな山林に土砂崩れが起き、家屋が倒れ、至る所で道路にひびが入った。今も避難指示が解除されていない地域が残る。
弘幸さんは、町で育ち、役場に63歳まで勤めた。地震後、町内の仮設住宅や公営住宅への転居も勧められたが、孝子さんが体調を崩し、弘幸さん一人で孝子さんを支えるには買い物に不便な立地だったため断念した。「これ以上、娘には迷惑をかけられない」。今年2月、苫小牧市のグループホームに移った。部屋は約50平方メートル。2階建てだった安平町の自宅より手狭になった。
地震で壊れた仏壇も新しくし、心のよりどころにしている。「機会があればいつでも安平に行きたい。死ぬまで、せめてもう少しでも長く、住みたかった」
朝日新聞社
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