牛角撃破から一転、焼肉きんぐが抱え込む「食べ放題という時限爆弾」
2022年06月22日
牛角はもはや敵ではない

画像:焼肉きんぐ公式サイトより引用
この2年以上のコロナ禍で、すっかり消費者の生活習慣は変貌。外食に対する感覚も大きく変わってしまった。そんな中でも、目覚ましい好調ぶりを見せるチェーン店が焼肉業界にある。株式会社物語コーポレーションが運営する「焼肉きんぐ」だ。 【写真】「焼肉きんぐ」と「牛角」どちらが好きですか? 意外な差があった…! 6月9日に発表された『2022年6月期5月度 月次売上高前期比(速報値)』を見ても、その勢いは明らかだ。 飲食業界全体で客足が回復傾向にあった4月、5月。同社「焼肉部門」の客数は、前年対比で118.0%、131.5%の伸び。売上高もそれに比例して、120.8%、138.1%の大躍進を見せている。 少し遡った情報だが、近々の同社の決算状況(2021年6月期)も見ておこう。売上高は約640億円。営業利益約25億円、経常利益約42億円のプラスになっている。 これがいかに“圧倒的成長”と呼べるのか。それは絶対的なライバル、かつての焼肉業界の雄「牛角」の苦戦を見れば分かりやすい。 牛角を運営する株式会社レインズインターナショナルの決算状況(2021年3月期)は、売上高約409億円。営業利益、経常利益は共に約57億円、約82億円の大幅なマイナスとなっている。 もちろん、これだけでは単純に評価はできない。我々外食コンサルタントは店舗売上評価をする際に大切な経営指標「坪売上(一坪当たりの売上)」で判断してみよう。
どこで差が生まれたのか

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筆者が各々の店舗視察を行った上での推測となるが、焼肉きんぐは1店舗当たり平均約100坪、牛角は1店舗当たり約40坪とさせていただく。ここから坪売上を算出すると、焼肉きんぐは約23万円、牛角は約14万円となった。 外食業界における一般論として、繁盛店の基準は「坪売上20万円以上」と言われる。ただし、この基準はどちらかといえば個人・中小事業主を対象としたもの。人件費や本部費などが重なり、損益分岐点も高い大手チェーンでは「是が非でも超えたいボーダーライン」だ。 そう考えると、焼肉きんぐは実に順調な一方、牛角はボーダーラインを割り、苦境に立たされていると言っていいだろう。なぜ、これほどまでに両社で明暗が分かれたのか。筆者は「食べ放題」の差だと考えている。 コロナ禍で「外食=危険」と考える人も増え、外食それ自体に特別感が増した。そうなると外食の機会には、自宅で再現しづらいものが求められやすくなる。 その最たるものが「食べ放題」というわけだ。現に、牛角の店舗を回ってみると、全国に14店舗しかない食べ放題を扱う店舗は軒並み活況となっていた。 その上で消費者はコスパを重視する。焼肉きんぐの定番食べ放題「きんぐコース」は税込3278円(100分)、牛角の定番食べ放題「牛角コース」は税込み3938円(90分)。たった約700円、されど700円の差は大きい。コスパにシビアな消費者が、牛角よりも焼肉きんぐを選ぶのも納得と言える。 だが、これで焼肉きんぐが安泰かといえば、そうとも言い切れない。それどころか、今後早いうちにピンチに陥るだろうと筆者は考えている。
