半導体復活プロジェクトの鍵は「北海道バレー」にあり
2023年07月10日
かつて世界ナンバーワンの座にあった日本の半導体産業は、1990年代後半以降、衰退の一途を辿り、現在は世界シェア10%未満にまで低迷。先端分野に関しては「世界から10年遅れている」とまで言われている。 【写真】この記事の写真を見る(4枚) そんな惨憺たる状況の中、昨年8月に復活を期して国内の主要企業8社の合同出資により立ち上げられたのが新会社「ラピダス」だった。
きっかけはジョン・ケリーからの電話

東哲郎氏 ©文藝春秋
同社は2027年を目途に最先端である2ナノメートルの半導体を量産化する国家プロジェクトを掲げているが、「文藝春秋」8月号において、ラピダス会長の東哲郎氏と東京大学大学院システムデザイン研究センター長の黒田忠広氏が対談し、プロジェクト始動の舞台裏を語っている。 〈きっかけは、4年前の2019年にIBMの当時CTOだったジョン・ケリーから電話で「2ナノメートルのロジック(半導体内部でデジタルデータの演算・処理を行う機能)の開発が完了した。技術提供をするから、日本で製造しないか」と持ち掛けられたことでした。 その瞬間に「日本がやらなければ他の国がやるだろう。これはラストチャンスだ」と思ったんです。ただ、そのIBMのロジックが使い物になるかどうかが問題。そこで小池淳義さん(ラピダス現社長)に検討してもらった。経産省や、半導体戦略推進議員連盟会長の甘利明さんにも相談しました。最終的にいけると見通しが立ったから、このプロジェクトが動き出したわけです〉(東氏) 実は東氏とIBMとは、東京エレクトロン社長時代からの長年にわたる交流があり、それが技術提供の話に繋がったという。
新天地での挑戦
〈私とIBMの関係には長い歴史があって、2001年に米国同時多発テロ、セプテンバーイレブンがありましたよね。その翌年にIBMから、「NYを復興させるために、最先端の技術や産業を州都オールバニにあるNY州立大学などに集約させることをNY州政府と合意した。東京エレクトロン(東氏が当時勤務)も、参加しないか?」と言われ、オールバニのナノテクノロジー開発施設はこの3者で始まったという経緯があります〉(東氏) ラピダスは現在、北海道千歳市にある100ヘクタールもの広大な土地に工場を建設中だが、東氏はその地域を将来的に日本のシリコンバレーにする構想を抱く。 〈1つは土地の広さです。千歳市に建設予定の工場は、100ヘクタール(東京ドーム21個分)に及びます。水や空気も綺麗で半導体の製造に向いていますし、北海道庁も全面的にサポートしてくれる。そして何より他の企業と、人材やリソースの奪い合いをしたくなかったんです。例えば熊本にはすでにTSMCがいる、東北にはキオクシアがいる。そこに割って入るのではなく、あくまでも新天地で挑戦すべきだというのが私の持論です〉(東氏) 〈インフラ整備や、病院や教育施設も呼び込んで、私たちも町おこしを狙っています。それが日本経済の復興に繋がる。ラピダスは工場建設予定の千歳市だけでなく、周囲の苫小牧市なども巻き込んで、いずれは「北海道バレー」を形成したいと思っています。九州がシリコンアイランドと呼ばれるように北海道はシリコンバレーに倣ってですね(笑)〉(東氏) 7月10日発売の「文藝春秋」8月号では、「日の丸半導体を復活させる」と題して、東氏と黒田氏が日本の半導体産業が低迷した理由や、ラピダスが抱える人材確保や資金繰りの課題について詳細に語っている
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