焼失の首里城 復元の鍵握る「技」の継承――「きっとまた直せる」職人たちの誇りと熱意
2019年12月10日
沖縄県那覇市で2019年10月末、首里城の正殿など8棟が焼損した。1986年から始まった前回の復元事業は、完了まで33年間、約260億円の事業費を要した。それを支えたのは「現場」である。大工、赤瓦職人、漆芸職人……。そうした人たちによる「技」は、今も今後も継承可能なのか。焼け落ちた首里城に限らず、歴史的建造物を復元、修復する意義はどこにあるのだろうか。職人たちを訪ね、復元の足元を見つめた。(文・写真:当銘寿夫/Yahoo!ニュース 特集編集部)
沖縄の赤瓦 それを支える人々
太陽がジリジリと熱い。11月というのに、2010年のその日、最高気温は29.9℃に達していた。
職人たちは、首里城正殿の屋根の上にいた。高さ18メートル。屋根の傾斜に体を預けながら、片手で体を支え、もう片方の手でコテを握っていた。約20センチ四方の板に載せた漆喰(しっくい)をコテですくい、慎重に塗っていく。
首里城正殿の屋根で漆喰を塗り直す職人=2010年11月(提供:沖縄県琉球赤瓦漆喰施工協同組合)
日本家屋の瓦屋根と違い、瓦と瓦の間に漆喰をこんもりと盛る。瓦の赤と漆喰の白、それらが織りなす縞。これこそが首里城の大きな特徴だ。
赤瓦職人の田端忠さん(56)は、2010年の正殿の漆喰塗り替えに携わった。
「ほかとはくらべものにならない水準を要求されましたね。瓦の並びである『節』をきれいにそろえる必要があり、漆喰の厚みや幅もそろえないといけない。赤瓦に(鉛筆でガイド線を引く)『墨出し』をやって、そして漆喰の厚みや幅をその線にそろえないといけないんです」

首里城正殿。今年10月31日未明に焼失した。電気系統が原因とみられている(写真:アフロ)
首里城の正殿や北殿、南殿……。田端さんの漆喰塗りは、首里城のあちこちに及んだ。首里城と民間住宅では、ほかにも違いがあった。
「民間の住宅では上塗り、下塗りと漆喰を2回塗るのが基本です。首里城は中塗りもある。3回塗ることで微妙な色合いを調整できるので、色のむらがより出にくくなるんです」
赤瓦職人たちのコテは、左官職人のそれとは異なっている。左官職人のコテは、表面部分が平面。それに対し、赤瓦職人のコテは若干の曲線を描く。

赤瓦職人の田端忠さん。コテには独特の曲線がある
「瓦と瓦の間の漆喰をなでるようにして、きれいに仕上げる。それにはこっちのコテが適しているんです。(赤瓦用のコテを使っても)技術のある先輩たちは表面をきれいに仕上げる。経験が浅いと表面のガサガサを潰しきれません」
田端さんはそう言って、慣れた手つきでコテを操ってみせてくれた。
首里城の屋根の整然とした雰囲気は、こうした細やかな技術が支えてきたのだ。
沖縄の瓦職人たち、当時はできなかったが
沖縄の瓦職人たちにとって、首里城の復元には苦い思い出があるという。1989年からの正殿復元では、地元の職人は瓦を固定する「瓦葺き(かわらぶき)」を担うことができなかったのだ。
田端さんが振り返る。
「工事の仕様書に、瓦を葺くのは『国家資格を持つ者』と定められていたんです。『かわらぶき技能士』です。この国家資格は『和型』と呼ばれるヤマトゥ(本土)の瓦を施工するための資格。沖縄の赤瓦は『本葺き(ほんぶき)』という工法でやっていたので、沖縄の職人はその資格と縁がなかったんですよ。だから、正殿復元のときは沖縄の職人が瓦葺きに入っていない。漆喰塗りは沖縄の職人がやったんですが……」
水族館でひっそり15年 実は新種だったイソギンチャク
2019年12月10日
沖縄美(ちゅ)ら海水族館(沖縄県本部町)で15年間飼育されていたイソギンチャクが新種だったと分かった。東京大などの研究チームが10日付の日本動物学会の学会誌(電子版)に発表した。2004年に石垣島沖の深海で採集されていたが、これまで属や種の特定ができず、公開していない水槽で人知れず飼育されていた。
新種はクローバーカワリギンチャク属で、水族館の名前にちなんで「チュラウミカワリギンチャク」と名付けられた。この属にはこれまで1種類しかいないと考えられていたが、101年ぶりの新種発見となった。東京大や鹿児島大、水族館などの研究チームが、海外の博物館にある標本と比較したり、無人潜水艇で深海を調査したりして特定したという。
金平会長が休会届け提出。復活希望も「協栄ジム」名称使えず60年の名門ジムは消滅に具志堅用高氏「寂しい」
2019年12月10日
プロボクシングの名門、協栄ジムの金平桂一郎会長(54)が9日、加盟していた東日本ボクシング協会に休会届けを提出した。5年前に事実上、経営権を譲渡したオーナーとの関係が今年に入って悪化。先月27日に契約解除を通告され、再協議を申し入れたが、応じられなかったため休会を決意したという。金平会長は契約解除の不当性や一部不透明な経理について争う訴訟の準備に入った。また金平会長は、ジム再開への意欲を示したが、5年を過ぎれば自動的に退会となる。協会側は試合の決まっている選手を無視して休会した経緯を問題視、再開についてハードルを設ける姿勢を明らかにした。さらに「協栄ジム」の商標権を現在の運営会社に押さえられているため、再開する際にも「協栄ジム」とは名乗れず、またジム存続の意向の現運営会社が新しいオーナーを立てて継続する場合も協会側が同じ名前を使うことを認めない意向で事実上、60年の歴史のある「協栄」の名がボクシング界から消滅することになった。
金平会長は、この日、代理人である太田貴裕・弁護士を伴って東京都文京区にあるJBC(日本ボクシングコミッション)を訪れて休会届けを提出することを報告、その後、近くの東日本ボクシング協会の事務所に足を運び、9日付けの休会届けを提出して受理された。9日をもって13人の世界王者を生んだ名門、「協栄ジム」の名は加盟ジム名簿から消えて消滅することになった。
メディアの取材に応じた金平会長は、「いろいろな理由がありますが、私の不徳のいたすところ。父も草場の陰で泣いているんではないかと思っております。どんなことがあっても父は40年間、ジムを守ってきました。それを私が20年目にして……申し訳ない。何より選手が一番。すべての方にお詫びを申し上げたい」と、選手、関係者、ファンらに謝罪した。
金平会長と弁護士の説明によると、先代の借金に加えて、2012年3月の元WBC世界スーパーフライ級王者、佐藤洋太の世界挑戦実現に莫大な費用がかかるなどして経営が悪化。自社ビルを売却し、2014年9月末には、経営権と「協栄ジム」の商標権をスポンサー企業に譲渡した。新たに運営会社が設立され、金平会長は、その会社から業務委託という形でジムの運営を任され、毎月、業務委託費が振り込まれていた。譲渡の際、大きな売却金が動いたとの話も出ているが、金平会長は「それはございません。何千万とかの契約金もありません」と否定した。
当初からジムを維持するための諸経費や金平会長の交通費などが支払われず「自腹で払っていた」との問題も抱えていたが、今年に入って「運営会社から情報がこなくなり、定期的な経営会議にも呼ばれなくなり経営から遠ざけられた」(太田弁護士)という。
7月末に数十万円の業務委託料が、約半額にされ、11月27日には、「会長としての職務を果たしていない」との理由で契約解除を文書で通告された。
<半沢直樹SP>主要キャストに北村匠海、緒形直人らが決定!「“ONE TEAM”の意気込みで…」
2019年12月10日
TBS系で2020年4月から放送する日曜劇場「半沢直樹」(仮)。その放送に先駆け、2020年1月3日(金)に、吉沢亮主演で放送されるスペシャルドラマ「半沢直樹イヤー記念・エピソードゼロ」の主要キャストが一挙発表された。
主人公の敏腕プログラマー・高坂圭(こうさか・けい)を演じる吉沢亮、半沢の出向先の新入社員・浜村瞳(はまむら・ひとみ)役の今田美桜のほか、主要キャストとして、若本健人(わかもと・けんと)役で吉沢悠、加納一成(かのう・かずなり)役で井上芳雄、黒木亮介(くろき・りょうすけ)役で北村匠海、瀬名洋介(せな・ようすけ)役で尾上松也、そして城崎勝(しろさき・かつや)役で緒形直人が出演する。
吉沢悠演じる若本は、高坂が働くIT企業「スパイラル」開発部のリーダー格。井上演じる加納は「スパイラル」の専務。北村演じる黒木は、高坂と過去に因縁のある謎の人物。松也演じる瀬名は「スパイラル」の社長。緒形演じる城崎は「東京セントラル証券」情報システム部の主任という役どころだ。
また、加納と瀬名は、4月に放送を控えた続編の原作にも登場する人物。シリーズの展開においても重要な鍵を握る人物となる。
「南極大陸」(2011年)をはじめとするTBS日曜劇場(夜9:00)枠の常連でもあり、確かな演技力に定評のある吉沢、ミュージカル界のプリンスと呼ばれ、日本のミュージカルシーンをけん引する井上、歌舞伎俳優として伝統を継承する一方で、新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」でユパを演じるなど挑戦を続ける松也、映画「君の膵臓をたべたい」(2017年)、「君は月夜に光り輝く」(2019年)など数多くの作品で独特の存在感を放つ北村。そして、父、息子と三世代にわたり俳優界をけん引、ベテランとして貫禄が増してきた緒形と、豪華な俳優陣が集結した。
そのほかにも、瞳の上司で「東京セントラル証券」情報システム部の部長・府川義則(ふかわ・よしのり)役で元「劇団四季」の栗原英雄、さらに玉置玲央、磯崎義知、吹越ともみなど個性派俳優陣の出演も決定している。(※磯崎義知の「崎」は正しくは「立つさき」)
■ 吉沢悠コメント
日曜劇場「半沢直樹』から数年を経て、2020年、新たな半沢イヤー記念に相応しい内容のスペシャルドラマに出演させていただき、とてもうれしく思っています。僕がこの作品にとても感動しているのは、撮影現場の空気自体がドラマの空気感同様、緊張感と高い熱量に包まれていることです。
「半沢ファン」の期待に応えつつ、エピソードゼロの独特な違った世界観を生み出そうと、全員が必ず最高のドラマにしようという気持ちの表れではと思います。
「こんな半沢があっても面白い!」というスペシャルドラマになっていますので、どうぞご覧ください!!
■ 井上芳雄コメント
「半沢直樹」のスペシャルドラマにお声掛けいただき、大変興奮しました。普段は舞台が多く、ドラマ出演が多い訳ではない中で、本当にありがたい機会だと思っています。
私が演じるのはIT企業の専務という役柄ですが、僕自身はアナログな人間なので分からないことも多いです(笑)。今の時代らしい最先端の業界の話で、新鮮な気持ちで演じられたらと思っています。また、吉沢亮さんとは初共演となるので、そこも楽しみにしています。
「半沢直樹」らしい痛快な展開が紡がれていますし、新年から「今年も頑張るぞ」という気持ちになれる作品になっていると思いますので、是非ご覧ください!
■ 北村匠海コメント
「半沢直樹イヤー記念・エピソードゼロ」に出演させていただくことになりました北村匠海です。
今回、自分としてもなかなか今までに演じたことのない役どころですし、約1年ぶりにTBSさんのドラマに帰ってこられたうれしさもあります。
別作品でも撮影の苦楽を共にした吉沢亮くんの脇を支えるいいエッセンスになれればいいなと思います。
■ 尾上松也コメント
このたび「半沢直樹イヤー記念・エピソードゼロ」に、出演させていただくことになりました。あの伝説のドラマのスピンオフ作品に出演できますことは光栄の極みです。
私は今回主人公の高坂圭が勤めているスパイラルの社長・瀬名洋介を演じます。
本編にも負けない作品にできますよう、全力でつとめます!
どうぞお楽しみに!
■ 緒形直人コメント
只今、熱いスタッフと俳優たちに囲まれ“ONE TEAM”の意気込みで、鋭意撮影を行なっております。私自身は、皆様に楽しんでいただけるように良い緊張感を持って丁寧に演じていければ良いなと思っております。半沢直樹イヤーの先陣として、どんなドラマに仕上がるのか『半沢直樹イヤー記念・エピソードゼロ』をご期待ください。
■ 一大プロジェクトの裏でうごめく“陰謀”
半沢直樹が出向した東京中央銀行の関連会社「東京セントラル証券」では、証券トレーディングシステムの大規模リニューアルを予定していた。
一方、検索エンジンサービスの開発・運用で勢力を伸ばしていた新興IT企業「スパイラル」の新人プログラマー・高坂圭(吉沢亮)はあまり目立たない社員だったが、ある日、突如発生したシステムダウンのピンチを凄まじいプログラミング能力で乗り切り、周囲を驚かせる。彼の実力を認めた加納専務(井上芳雄)からコンペのプロジェクトリーダーに任命された高坂は、オリエンテーションの会場で「東京セントラル証券」のリニューアルの担当者である城崎勝也(緒形直人)や新入社員の浜村瞳(今田美桜)と知り合う。
そんな中、ある一人の男が「スパイラル」を訪ねてくる。彼の名前は黒木亮介(北村匠海)といい、高坂の古い友人らしい。黒木を前にした高坂は脳裏に過去のある苦い記憶がよみがえる…。
成功すれば数億の売り上げに繋がる重要なプロジェクト。「スパイラル」にとって社運を賭けたこの一大プロジェクトが進行する裏で、人知れず“ある陰謀”が同時にうごめいていたことを、まだ誰一人も知らなかった――。
マンション保険値上げ続々 更新で数倍も、住民は留意
2019年12月09日
マンションの管理組合が加入する保険の値上げが相次いでいる。老朽物件が増えて給排水管などの破損が多発し、保険金支払いが膨らんでいるからだ。大型台風による浸水でマンションの共用部に大きな被害が出たのは記憶に新しい。管理組合は契約更新前に対策を練りたい。
「10月以降は更新期に保険料がそれまでの数倍に跳ね上がる可能性がある」。不動産コンサルのさくら事務所(東京・渋谷)の土屋輝之氏はこう指摘する。分譲マンションの火災保険は2種類あり、専有部分は各所有者が、共用部分は管理組合が保険に加入する。保険料の上昇が目立つのは共用部分の保険だ。
損害保険各社はここ数年、火災保険の値上げを繰り返しており、この10月にも改定があった。変化率は地域や規模で違うが、東京都内の物件では今年10月分だけで20%超上がった例がある。2012年以降は築年数によって保険料に差をつける仕組みも一般化。細部は各社で異なるが、「総じて1年古くなるごとに保険料は数%上がるイメージ」(大手損保)という。
共用部保険の期間は最長5年。今年10月以降の更新では、過去数回のベース保険料の上昇がまとめて反映される上、築年数が古くなった分を加算されるマンションもある。結果、前回契約時に比べて保険料が数倍に膨らむケースが出る見込みだ。
なぜ、こんな事態になったのか。共用部用保険は主契約が火災補償で、水ぬれなどは特約で補償する。マンションの全焼リスクは低く、保険事故の中で最も多いのは水ぬれ関連だ(グラフA)。
特に1980年代以降に大量供給されたマンションが築30年を超え、老朽化した給排水管が絡む事故が多発。水ぬれ関連の保険金の支払いが増えている(グラフBは一般住宅向け保険全体)。老朽化した給排水管修理は保険の対象外だが、水ぬれで生じた損害に対する賠償責任特約の支払いが増えているようだ。
保険事故の多発で保険料が上昇している。大幅値上げになれば、管理費の上昇につながり、個人所有者の家計も圧迫する。早めに対策を考えておく方が無難だ。
最も有効なのは早めに老朽化対策を施し、事故そのものを減らすこと。例えば、日新火災海上保険は15年からマンション管理士が給排水管の工事実施や長期修繕計画の設定などの状況を診断し、高評価を受けると平均20~30%保険料を引き下げる商品を発売し、契約数を増やしている。
他の損保大手も10月、各マンションの事故率で保険料を変える制度を一斉導入した。一定期間の事故数をマンション戸数で割って事故率を算出し、「2%以下」など低水準なら保険料を大幅に下げる。そのほか、独自基準を設けて保険料を割り引く会社も増えている(表C)。
香港デモ、区議選後初の大規模行進 抗議象徴の歌を合唱
2019年12月09日
香港で8日、主催者発表で約80万人(警察発表は18万3千人)が参加する大規模なデモ行進があった。民主派が大勝した11月の区議会選挙に続き、香港政府への反発が根強いことが示された形だ。抗議デモは今後も勢いを継続する見通しとなった。
【写真】香港島の繁華街を練り歩くデモ隊=2019年12月8日午後、香港、竹花徹朗撮影
抗議デモが大規模化して9日で半年になるのを前に、市民を巻き込んで大型デモを実現した民主派の主要市民団体「民間人権陣線(民陣)」が呼びかけた。
出発地の香港島のビクトリア公園には、行進開始前から大勢の市民が集結し、付近の道路にまで人があふれた。参加者は抗議デモを象徴する歌となっている「願栄光帰香港(香港に再び栄光あれ)」を合唱した後、普通選挙の導入など「五大要求」の受け入れを求めながら香港島中心部の大通りを行進した。
むしろ灰に…」香港理工大に若者が残した日本語とラテン語のスローガン
2019年12月09日
警察は11月29日、1000人以上の若者らが立てこもりを続けた香港理工大の包囲を12日ぶりに解除した。多くの若者らが拘束されたキャンパス内には、いたるところにスプレーなどで書かれたスローガンが残されていた。強く印象に残った言葉を紹介したい。【台北特派員・福岡静哉】
【写真特集】香港理科大キャンパスのいたるところに残された言葉
◇孫文は「初代の暴徒」
香港理工大では11月17日、警官隊との激しい衝突があった。警察はキャンパスを包囲し、逃げ出そうとしたり投降したりした若者らの大半を拘束。その後、火炎瓶など危険物を押収した上で、29日に包囲を解除した。
記者も29日、キャンパス内に入った。武器に使うレンガや火炎瓶の空き瓶などが残され、無数のヘルメットや防毒マスクが散らばっていた。テーブルには箸が入ったままのカップラーメンの容器が残され、体育館にはマットレスや布団が敷かれたままになっていた。つい先ほどまで若者たちがそこにいたかのような錯覚を覚えた。
「民主主義のコストは高すぎるということはない」「私が諦めたら、いったい誰がここを守るというのか」。壁や柱に書かれたスローガンが次々と目の前に現れる。警察に包囲され、追い詰められた若者たちの悲壮な覚悟が伝わってくる。
キャンパス内を奥に進むと、孫文の銅像が見えてきた。ヘルメット、防毒マスクにゴーグルという「デモ隊スタイル」にされていた。
武装蜂起して清王朝を倒し、1912年に中国で中華民国を建国した孫文は、香港にゆかりが深い。このため香港各地の大学に孫文の銅像がある。孫文は香港に近い中国・広東省の出身で、香港華人西医書院(香港大医学部の前身)で医学を修めた。「中国革命の父」と呼ばれ、その革命思想は香港で育まれたと言われている。実際に孫文は1923年に香港大で講演した際に「私の思想の源は香港にある」と語っている。
孫文像の台座に、日本語でこう書いた紙が張られていた。日本語を習得した香港人が書いたのか、日本人が書いたのかは分からない。
「初代の暴徒」
火炎瓶などを使い暴力的な手法で抗議活動を続ける「勇武派」と呼ばれる若者らを、香港政府は「暴徒」と呼んで非難する。香港では暴動罪は最高で禁錮10年の重罪であり、「暴徒」の意味は、日本語のそれよりも強い。
孫文が活躍した時期と今は、時代背景も違う。ただ、これを書いた人物は、暴力革命を成功させて民族の英雄となった孫文を「初代の暴徒」と名付けることで、中国共産党政権と香港政府に抵抗する自分たちの姿を重ね合わせたのかもしれない。
◇ラテン語の警句
キャンパスの正面入り口付近は壁が黒く焼け焦げ、警察と若者の衝突の激しさを物語っていた。その近くに、こんなラテン語の言葉を見つけた。文学を学ぶ若者が書いたものだろうか。
Quis Custodiet ipsos custodes?
ラテン語研究者の山下太郎・元京都工芸繊維大助教授(57)=京都市=によると「誰が見張り役を見張るのか」との意味がある。出典は古代ローマの風刺詩人、ユウェナーリスの詩集。山下さんは「日本語の『泥棒に金庫番をさせる』と同じ意味ですが、この警句は政治的な意味に使われることが多い。法を自分の都合に合わせて解釈する者が法の監視役に就いていることへの憤りを示しています」と解説する。
香港の憲法に当たる香港基本法は、その解釈権が中国全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会(全人代常務委)に握られている。これまでも、香港の司法が中国側に都合の悪い判断を示すと、全人代常務委が基本法を「解釈」し、判断を覆してきた。
香港基本法は「高度な自治」が保障された1国2制度をうたっているにもかかわらず、最終的な決定権は中国側が握る。このラテン語の警句を書いた人物は、香港の1国2制度に潜む欺まんを痛烈に批判したかったのだろう。
◇「勇武派の人としか結婚しない」
「死なばもろとも」。キャンパス内には悲壮な覚悟を示す言葉が並ぶ。「むしろ灰になることを選ぶ」とのスローガンには「自由を勝ち取れないくらいなら、死を選ぶ」という意味が込められている。実際に6月にデモが本格化した後、政府への抗議や絶望感から自殺をする若者は後を絶たない。
「勇武派の人としか結婚しない」
ハートマーク付きのこんなメッセージも見つけた。若い女性が書いたものだろう。立てこもりをした若者の多くは10~20代。恋もしたい。将来の夢もある。だが拘束された若者たちのうち既に200人以上が暴動罪で起訴された。残りの多くも起訴される可能性が高い。
ガラスを破壊し、火炎瓶を投げ、警察官に殴りかかるのは犯罪行為だ。だが、多くの未来ある若者たちがなぜ、自分たちの将来を犠牲にしてまで、こんなに激しい抗議活動を続けているのか。香港政府や中国共産党指導部がその心情を理解しようとしなければ、今後も同じような悲劇が起きる気がしてならない。
北朝鮮「重大実験に成功」 ICBMエンジン燃焼か
2019年12月09日
北朝鮮の国防科学院報道官は8日、北西部東倉里の「西海衛星発射場」で7日午後に「非常に重大な実験」を行い、成功したと発表した。朝鮮中央通信が伝えた。実験内容は明らかにしていない。エンジン燃焼実験など大陸間弾道ミサイル(ICBM)に関連した実験の可能性がある。
報道官は朝鮮労働党中央委員会に結果を報告したとし、「近く(北朝鮮の)戦略的地位をもう一度変化させる上で重要な効果を持つだろう」と強調した。北朝鮮は非核化を巡る米朝交渉で年末を期限に米側に譲歩を迫っている。ICBM発射再開をちらつかせ、揺さぶりを一層強めた形だ。
北朝鮮大使、非核化「交渉テーブルにない」 期限迫り、米をけん制
2019年12月09日
北朝鮮の金星国連大使は7日、声明を発表し、「米国と今、長い協議を行う必要はない。非核化は既に交渉のテーブルから下ろされた」と主張した。
北朝鮮が米国との非核化交渉の期限とする年末が近づく中、交渉の打ち切りをちらつかせ、米国に速やかな対応を迫る狙いがあるとみられる。
北朝鮮のリ・テソン外務次官(米国担当)は3日の談話で、停滞する米朝協議に関し「クリスマスプレゼントに何を選ぶかは米国の決心に懸かっている」と述べ、年末までの譲歩を要求。米側の対応次第では、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射などを強行する可能性を示唆した。
金氏の声明はさらに踏み込んでおり、揺さぶりを強めた形。米国の求める「持続的で実質的な対話」についても、「内政課題のために朝米対話を利用する時間稼ぎの策略」と批判した。
トランプ米大統領は声明に対し、「北朝鮮が敵対的な行動を取れば驚く。(朝鮮労働党委員長の)金正恩氏とは非常に良い関係にあるし、双方ともそれが維持されることを望んでいる」と述べた。
ジョンソン首相、自身の選挙区で苦戦か 25歳野党対抗馬に勢い 英総選挙
2019年12月09日
12日に迫った英総選挙で、ジョンソン首相(与党・保守党)が出馬するロンドン西部の選挙区に注目が集まっている。
【写真】民放ITVで放送されたジョンソン首相と労働党のコービン党首
ライバルの最大野党・労働党候補が勢いを増し、接戦の可能性が指摘されるからだ。保守党が過半数を獲得したとしても、「現役首相落選」の異例の事態となれば、首相が唱える欧州連合(EU)離脱実現への影響は必至。同選挙区を訪れ、情勢を探った。
◇「歴史をつくろう」
アクスブリッジ・アンド・サウスライスリップ選挙区は伝統的に保守党が強く、ジョンソン氏は2015年総選挙で次点の労働党候補に1万票以上の差をつけて当選した。だが、もともと落下傘候補だった同氏は地元の問題に不熱心とされ、17年前回選挙ではその差は半減。報道によれば保守党は今回、内部調査で同選挙区を「落選リスクあり」と予想、「屈辱」を避けるため同氏が選挙区を替える動きも一時伝えられた。
首相に挑む労働党のアリ・ミラニ氏(25)は、イラン系移民のイスラム教徒。公営住宅でひとり親家庭に育った苦労人だ。出馬当初は無名だったが、若年層に焦点を当てて地元密着型の運動を展開。次第に支持を広げ、各紙が「首相追い落としを仕掛ける男」「アクスブリッジで衝撃的結果も?」とこぞって取り上げたことから、一躍「時の人」になった。「ボリス(ジョンソン首相)のように億万長者の支援者はいないが、僕たちには仲間というもっと力強いものがある。ボリスを落選させて歴史をつくろう」と訴える。
◇勝利に期待、慎重論も
区内の大学構内で取材に応じたアスマ・アシフさん(22)は労働党支持。「アリは物事を明快に話すから聴衆を引き付ける。彼が首相を追い落とす可能性はある」としながらも、「たぶん今回は無理かな。高齢者が若者の利益を考えずに投票するから」。トーマス・ヒラーさん(21)は「僕たちの世代のためにより取り組んでくれる労働党に入れる。アリが勝つか、少なくとも接戦の可能性は十分あると思う」と述べた。
ミラニ氏のチラシ配りをしていた労働党活動家のモニカさんは「前回は保守党を支持したけれど、EU離脱に反対して今回は労働党に入れるという人たちに会った。(ミラニ氏勝利に)期待を持っているわ」と笑顔。一方、病院勤務のトレバー・モットさん(57)は「国民は離脱を選んだのに民主主義が実行されていない」とし、離脱実現を約束する保守党に投票すると語った。


