WHO、台湾参加は加盟国が決定 事務局法務官が言明
2021年05月11日
世界保健機関(WHO)のソロモン首席法務官は10日の記者会見で、台湾のWHO総会へのオブザーバー参加について「加盟国に決定する権限があり、WHO事務局にはない」と述べた。中国が同意しない限り、台湾の参加は実現しないことを改めて言明した格好となった。 米国は、24日から始まるWHO総会に台湾を招待するよう要求。一方、中国は華春瑩外務省報道局長が10日の記者会見で、米国の動きに「強烈な不満と断固とした反対」を表明しており、実現は絶望視されている。 WHO総会は主に予算や政策などを審議する場で、オブザーバーには議決権がない
「全国に緊急事態発令」視野に 知事会、対策強化を提言
2021年05月11日
全国知事会は10日、新型コロナウイルス対策に関する国への緊急提言をまとめた。変異株の急拡大を受け、全国での緊急事態宣言発令の可能性も視野に、強力な感染対策を要求。宣言の前段階となる「まん延防止等重点措置」は適用の手続きが遅いとして、知事の要請に応じ迅速に発動するよう改善を訴えた。 枝野氏、病床逼迫で大阪知事を非難「一番悪い」
この日のオンライン会合は全47知事が参加。新規感染者数が各地で過去最多を更新する現状を踏まえ、緊急事態宣言を全国に拡大し、都道府県境を越えた人の移動を抑えるなど、より強い対策に踏み込むべきだとの意見が相次いだ。
政権内で「9月解散論」有力に 野党の不信任見送り受け
2021年05月11日
菅政権内で10日、東京五輪・パラリンピック後の9月の衆院解散論が有力となった。立憲民主党の枝野幸男代表が内閣不信任決議案の提出見送り方針を表明したのを受け、今国会中(会期末6月16日)の解散は困難との見方が広がった。新型コロナウイルス感染を抑えられず、菅義偉首相が緊急事態宣言を延長する現状で、解散・総選挙に踏み切れば国民の批判は必至と警戒。首相はこれまで9月30日の自民党総裁任期満了前の解散に言及していた。 「必要ない政党…」枝野氏が反撃 大阪知事を非難
9月解散論は五輪の予定通りの実施が前提。9月5日のパラリンピック閉幕後に臨時国会で解散する日程が想定される。
入国後待機、1日最大300人が違反 警告メール送信へ
2021年05月11日
政府が新型コロナウイルス対策として外国からの入国者に求めている位置情報の報告などをめぐり、指示に従わない人が1日最大約300人に上ることが、厚生労働省への取材でわかった。位置情報を送信しなかったり、待機場所の自宅などから離れたりする例が目立つ。政府は警告メールを送るほか、警備員が自宅を訪れて確認するといった対策を取ることを決めた。 外国からの入国者には原則として入国後14日間、自宅待機を求めている。移動や人との接触により、感染を広げないようにするためだ。厚労省によると、入国後に14日間の待機を行っている人は現在、1日あたり約2万~2万4千人。スマートフォンのアプリやメールを使い、自らの位置情報や健康状態を毎日報告することを求め、入国時に誓約書を書いてもらっている。 ところが、そうした毎日の報告をしない人や、報告された位置が自宅などから離れている人が、1日あたり最大300人に達しているという。 政府対策本部は7日、こうした入国者向けの対策強化を決めた。所在確認の電話に出ない人には誓約書に違反していることを理由に、氏名公表の可能性がある旨の警告メールを送る。また、委託業者が待機場所の自宅などを訪れて、所在を確認するという。ただ、誓約書に違反しても、懲役や罰金などの罰則を科すことはできない。厚労省関係者は「移動の自由は憲法で保障されており、罰則を設けることは難しい」と話す。 10日の参院予算委員会では、立憲民主党の蓮舫代表代行が、誓約書違反の問題を取り上げ、「300人に連絡が取れなくなって、その人が体調が悪くなったのか、感染したのか、把握できていない。市中感染につながるのではないか」と批判した。
高齢者1万人「接種センター」 日本旅行、人材派遣会社に約37億円で自衛隊が“丸投げ”
2021年05月11日
内閣支持率の急落が止まらない菅政権が急きょ、ぶち上げた高齢者に対する「新型コロナワクチン1日1万人接種」計画だが、担当の自衛隊だけでは人手が足りず、人材派遣会社や日本旅行などに約37億円で“丸投げ”していたことがAERAdot.編集部の調べでわかった。 【写真】未経験者、フリーター、日払いOK!その時給は…人材募集の内容はこちら
菅政権は5月24日からスタートさせる東京と大阪に設置するワクチン大規模接種センターについて、東京では1日あたり最大接種人数を1万人、大阪は5千人とする目処がついた、とメディアにアナウンスしていた。 3カ月間で東京が計90万人、大阪は計45万人の接種を見込み、接種センターは土日祝日を含めて自衛隊が運営し、医官約70人、看護官約200人を全国の自衛隊病院や部隊から集めて東京と大阪の会場に派遣するなどと報道されている。 しかし、これには“カラクリ”があった。防衛省関係者はこう説明する。 「自衛隊の看護官の人数が圧倒的に足りないので、外注する形で集めることになったんです。菅首相がワクチン接種は『自衛隊がやる』と宣言はしたものの、結局は民間看護師、しかも非正規雇用の方を大量動員してやっつけで進めるしかなかったということです。この計画は菅首相の側近の和泉首相補佐官らが主導し、詳細を詰めぬまま、メディアに大々的にぶち上げられました。だが、ワクチンを所管する厚生労働省や内閣府、内閣官房などには何のノウハウもなく、困り果てていた。自衛隊に押し付ける形になりましたが、結局、看護師派遣や接種会場の受付などロジも含めて人材派遣会社、日本旅行、東武トップツアーズなどに約37億円で”丸投げ”となりました」 事業主体となる自衛隊によると、一般競争入札の公示が出されたのは5月3日、入札日は9日だった。募集人数は看護師200名で、「納期または工期」については5月17日から8月24日までとなっている。入札金額は約6億9千万円(税抜き)だという。 だが、受注企業が決まってからわずか8日で200人の看護師を集めるというのは決して簡単ではない。
「ワクチンいつ」対応追われる自治体、国の方針に苦言も
2021年05月11日
新型コロナウイルスの高齢者向けワクチン接種の電話予約をめぐり、混乱が続いている。NTT東日本は固定電話網がパンクするのを避けるため、10日に一部地域で通信を制限。この日予約を受け付けた自治体では、高齢者が役所に集まる一幕も。「いつ予約できるのか」との訴えが広がっている。 【動画】イオンで接種 「次の受け付けでは、今日やった操作の手間は省けないんですか」 10日夕、接種の予約窓口となっている東京都渋谷区の施設に訪れた、今年65歳になる女性は不満をあらわにした。女性は予約が始まる午前9時の前からスマートフォンでネット予約できるように待機したが、画面が「フリーズ」。その間に十数分ほどで受け付けが終わった。「こんなに手間取るなら、年齢順に受付日を決めてもらった方がまし」 同じく10日から受け付けが始まった東京都東久留米市では午前中でいっぱいに。電話がつながりにくい時間帯があり、30人以上が市役所にやってきたという。市内のコンサルティング業の男性(70)も予約開始時間の午前9時から30回以上電話したがつながらず、ネット予約に切り替えた。「ワクチンの接種は、災害時の危機にどう対応するかと似ている。民生委員や地域と連携して、どれぐらいの高齢者がネットを使えるのかなど地域にあった仕組みをつくってもよかったのではないか」と話した。市の担当者は「相談窓口は設けているが、『密』を防ぐため窓口での予約は受け付けていない。心苦しいです」。 80歳以上に限定して10日から予約の受け付けを始めたのは神奈川県鎌倉市。だが市内の男性(83)は受け付け開始の午前9時から午後2時まで電話し続けたが、つながらなかった。「来週からは65歳以上の予約も始まる。さらにつながらなくなるのではと心配」 千葉県習志野市では午前8時半の受け付けから30分後には予約枠が埋まった。市内に住む男性(77)は電話がつながらないまま、市のHPを見て「満員」と知った。「コロナでオンライン授業となっていて自宅にいる大学生の孫が予約を手伝ってくれると言っている。次回はネットと電話の2本立てでやってみようと思う」と話した。 先行して予約を受け付けているところでも混乱は続いている。 予約開始の3日午前9時に1分間で200万件のアクセスが集中し、ネットでも電話でも予約ができなくなった横浜市。予約は再開されたが、神奈川区に住む小笠芳輝さん(87)は「200回くらいかけてもつながらない。ひどすぎる」と言う。ネットが使えず、電話だけが頼りだが、いまもつながらない。「80歳以上の専用ダイヤルを用意するなど配慮してほしい。いつまで経っても予約できないんじゃないかと不安」と肩を落とした。 東京都立川市で一人暮らしをする女性(83)はパソコンもスマホも持っておらず、予約を頼める人もいない。市が受け付けを始めた6日から電話し続けているが、10日もつながらなかった。「予約してくれと言われてかけたのに。本当につながるのか不安が募る」。繰り返しかけたため番号は暗記したが、しばらく電話をかける気にはなれない。「月末くらいにかけてみようかな。その間にコロナになっちゃったらしょうがない」 ■「自治体にあとはよろしく、では無理がある」 こうした状況の中、各自治体も対応に追われる。さいたま市は、約30万人いる65歳以上の高齢者を五つの年齢層に分け、予約に必要な「接種券」の発送時期をずらした。最初に送ったのは85歳以上の約5万人。コールセンターに166回線を用意し、10日に予約の受け付けを開始。しかし、午前9時~午後3時に7万6782件の入電があり、回線がふさがった。市は「回線を増設するかを検討したい」という。電話がつながらない場合は、自動音声でそのまま待ってもらうか、かけ直してもらうよう呼びかけた。 横須賀市は予約専用のウェブサイトとLINE、コールセンターの3種類で受け付けを開始したが、予約集中により、午前9時前から予約がしづらくなった。システムを構築した業者の設定ミスが原因といい、市の担当者は「サーバーがダウンしたわけではない」。順調に推移すれば数日で受け付けを終えられるとしている。 神戸市は4月に75歳以上の受け付けを始めて以降、想定を超える申し込みが殺到。コールセンターの電話はほとんどつながらず、応答率は一時、数%にとどまった。市は段階的に回線数を増やすことにし、10日は当初より15回線多い135回線に。応答率は10%台だが、今月下旬までに300回線まで増やす計画だ。ネットでの予約もすでにサーバーを増強しており、利用しやすい状況になっているという。 堺市も4月下旬以降、「つながりにくい」との苦情が寄せられている。10日からコールセンターを100回線に増やしたが、かかりにくい状況は続く。市の担当者は「市で予約を一手に引き受けるには元々対象者が多すぎたが、これほど集中するとは」。この日から、市内300カ所の医療機関でも個別接種の申し込みが始まり、「今後は分散してスムーズになるのではないか」と話した。 予約の電話が集中するのは、期待が高い一方で現場への供給が足りないためとみられる。対象の高齢者は約3600万人いるのに対し、総接種回数は9日時点で約34万回だ。一方で菅義偉首相は、7月末までに終える方針を表明。自治体によっては計画の前倒しを迫られる可能性もある。10月初旬の終了を予定する広島市の阪谷幸春・保健医療担当局長は10日の会見で、「実施できる医療機関には限度がある。一方的に期限を設定されても難しい。(自治体に)『あとはよろしく』では無理がある」と国の方針に苦言を呈した
令和最大の負債額 元ホテル運営の東京商事が特別清算開始
2021年05月11日
(株)東京商事(TDB企業コード:982839093、資本金2000万円、東京都中央区日本橋堀留町1-8-12、代表清算人岩本孝氏)は、4月22日に東京地裁より特別清算開始命令を受けた。 申請代理人は石井亮弁護士(東京都千代田区大手町1-5-1、和田倉門法律事務所、電話03-6212-8100)。 当社は、1973年(昭和48年)3月に設立されたホテル、レジャー施設の運営業者。主要な観光地や都市圏において、ホテルや遊園地のほか、結婚式場、不動産業、ゴルフ場の運営、などを運営する企業グループの中核企業として、グループ企業のファイナンス、資金調達窓口としての役割を担うほか、自社でも「ホテルグリーンプラザ軽井沢」「軽井沢おもちゃ王国」などホテルや遊園地を経営。1991年12月期には年収入高約125億円を計上していた。 しかし、一部のホテル運営をグループ会社へ移管したことなどから、決算期変更後の2005年3月期の年収入高は約38億9000万円に減少していた。不動産購入、グループ企業に対する貸し付けなどに伴う過大な金融債務に加え、不良債権処理を行ったことで連続欠損を余儀なくされ、大幅な債務超過に転落していた。 この間、金融機関が断続的に債務を投資会社などに譲渡し、近年グループ会社の再編を進めるなか、2018年2月26日付で会社分割によって新設された(株)日本商事(TDB企業コード:773024486)に事業を譲渡、2020年12月に解散公告を出していた。 負債は2020年11月末時点で約1004億8300万円。 なお、負債額は(株)ダイヤメット(負債約577億9000万円、新潟県、2020年12月民事再生法)を上回り、元号が令和となって
会食しません」「カラオケしません」学生に誓約求める
2021年05月11日
三重大学(津市)が、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言が出されている地域から通う学生に対し、「会食しません」などの項目にチェックを入れる「誓約書」の提出を求めていることがわかった。大学側は「学生の安全を保つため」と説明し、罰則も想定していないとしているが、学内からも「やり過ぎ」などと批判の声が上がっている。 【動画】こちらは大勢で「会食」 誓約書は、「十分な感染予防対策を講じます」「学内では一人で食事をします」「三重県内では、人数や時間を問わず会食しません」「旅行は控えます」「カラオケはしません」など8項目を列挙。学生に対し、学籍番号、学部、学年、名前を記入し、誓約する項目にチェックして出すように求めているという。 同大学の授業は現在、対面とオンラインを併用している。4月下旬、3度目の緊急事態宣言が出された東京や大阪など4都府県から通う学生に、対面授業に出る場合は事前に大学に連絡し、誓約書を出すように求め始めた。現在は、宣言への追加が決まった愛知、福岡両県からの学生にも、同様の対応を促しているという。大学は、誓約を破った学生に対する罰則などは想定していないと説明している。 学生らによると、誓約書のひな型は、全学生が閲覧できる同大学専用サイトに掲載され、学生はダウンロードして書き込み、提出する仕組みだという。 同大学のある教授は「このやり方はありえない。学生の人権をどう考えているのか」と問題視し、「大学は学生と一緒にコロナ対策を考え、大学生活をつくっていくべきだ」と指摘する。 三重県内在住の学生は「昨年は全ての授業がオンラインで、やっと大学に行けるようになったと思ったらこれ。怒りやあきれの気持ちしかない」と話す。 一方、三重大学学務部の担当者は「緊急事態宣言が出されている地域の学生には、特に高い意識を持って通ってほしい。自覚を促し、学生の安全を保つための対策です」と説明する。 三重大学では、これまでに学生が開いた食事会などで、学生が絡む4事例のクラスター(感染者集団)が確認されている。
「どれほどの効果があるか示して」 休業要請継続で事業者ら困惑
2021年05月08日
またしても延長される緊急事態宣言。百貨店など大型商業施設は政府が午後8時までの営業を認めると表明したが、東京都の決定で休業要請が続くこととなった。飲食店も引き続き厳しい局面に。事業者の間には困惑や怒りが広がる。 【写真特集】緊急事態宣言の延長決定 街の様子は 「百貨店の休業にどれほどの感染対策効果があるのか示してほしい」。7日夜に都が休業要請を続ける方針を示すと、百貨店の男性社員(40)は反発した。 勤務先の店舗は、宣言期間に入った4月25日以降は食料品売り場などを除いて休業した。書き入れ時の大型連休に多くの社員が休み、雇用の維持を心配する同僚も。だが、街では家電量販店などがにぎわっていた。「休業要請対象の線引きが分かりにくい。『生活必需品』の解釈によって抜け道があるように思える」 東京都渋谷区のボウリング場「笹塚ボウル」も引き続き休業要請の対象となる。大型連休は2年連続でオープンできず、悔しい思いをした。財津宜史専務(41)は「今後は休業を要請されても、十分な補償がなければ営業せざるを得ない」と怒りを抑えるように話した。 休業要請から条件付き営業へと措置が緩和される施設も。休園中の東京・浅草の遊園地「浅草花やしき」。担当者によると、1日1万人ほどの来園を記録する日もある大型連休は、2年連続で休園となった。「感染対策は徹底している。なるべく早く再開したい」。それが今の望みだ。東京・台場のテーマパーク「東京ジョイポリス」も大型連休は2年連続で休館に。入館者数を上限の半分程度に制限し、乗り物は毎回消毒している。大屋勝海館長は「一日も早く営業を再開したい」と語った。 一方で飲食店は、引き続き営業時間短縮と酒類を提供しないことが求められる。「覚悟はしていた。でも、もう勘弁して」と語気を強めるのは、東京都杉並区のJR高円寺駅前の焼き肉店「塩ホルモン 獅子丸」の林友英店長(51)だ。元々午前3時まで開けていたが、現在は酒類の提供を取りやめ、午後8時に閉店している。 食材費や人件費を考えると、休業した方がよいと思う。それでも店を開けるのは、苦境にあえぐ取引業者やアルバイトを思ってのことだ。「お上には、うちらの思いは伝わらないんだろうな」とぼやいた。 休業中の東京・上野の立ち飲み居酒屋「魚草」は、13日から営業を再開する。代表の大橋磨州さん(39)は「飲食店に対する休業要請が人出の抑制につながっていない。十分な対策をとって営業する」と話した。 都内の別の居酒屋の店主は「宣言が延長されたら堂々と酒を出す」と開き直る。店先には「アルコール類の提供はできません」との張り紙があるが、客1人につき3本まで、缶ビールや缶酎ハイの持ち込みを認めている。常連客をつなぎ留める「苦肉の策」というが、宣言延長後はこうした持ち込みの禁止も要請される。「もう要請には付き合えない」と吐き捨てるように話した。
「インバウンド需要全滅」の日本と台湾で、経済成長に大差がある3つの理由
2021年05月08日
昨年来、猛威を振るい続ける新型コロナウイルスの封じ込めに成功したことで、世界中から称賛を浴びている台湾。2020年のGDP成長率は前年比2.98%を記録し、約30年ぶりに中国を上回るなど、経済面でも活況を呈している。台湾経済に好況をもたらしている要因は何なのだろうか。ジェトロ・アジア経済研究所にて地域研究センター長を務める、川上桃子氏に解説してもらった。(清談社 山田剛志) ● コロナ禍で需要アップの 半導体が産業の要 台湾ではコロナ禍以前より、エレクトロニクス産業(パソコンやIT企業のデータセンターで用いるサーバーおよびその部品等の生産)が経済の屋台骨。川上氏は、その中でもパソコンやスマートフォンに不可欠な部品である半導体の輸出が、現在の好景気を支えていると分析する。 「台湾には半導体の受託製造で世界の約50%のシェアを持つ『TSMC』という企業があります。コロナ禍以降、リモートワークやオンライン授業などが普及し、ネット上の活動がこれまで以上に盛んになったことで、パソコンをはじめとする情報通信機器が世界中で売れに売れ、半導体の需要が大幅に伸びています。そのお陰で去年の台湾における半導体の輸出額は前年に比べて23%アップ。世界全体の景気が冷え込んでいる中、この数字は驚異的です。コロナ禍で最も伸びている産業のひとつは間違いなく半導体です。そして台湾は以前から半導体の輸出が経済の要でした。これが現在の台湾の景況を支えている最も重要なファクターです」 ● 国内消費が活発化し パンデミック以前の水準を凌駕 日本ではコロナ禍以降、数少ない成長市場であったインバウンドがほぼ全滅し、観光業を中心に深刻な影響を被っている。台湾は日本と並ぶ東アジア屈指の観光大国であるが、インバウンド需要減少による経済打撃をどのようにカバーしているのだろうか。
「台湾も日本と同じく、インバウンドが全滅したことによる経済的ダメージを受けています。特にホテル業は当初、大きな打撃を被った(その後徐々に持ち直した)。ただし日本と違うのは、コロナの感染拡大防止に成功し、パンデミック以前の生活が継続しているので、国内の消費が落ちこんでいないという点です。むしろ、かねてより増加傾向にあった海外への旅行者が地元にお金を落とすようになったため、昨年の国内での民間消費は2019年よりも伸びています」 コロナ禍において台湾国内の消費活動が活発化している背景には、台湾政府が昨年7月に発行した「振興三倍券」の存在も大きい。1000台湾元(約3800円)の負担で、3000台湾元(約1万1500円)の消費ができるチケットが国民のほぼ全員に配布され、飲食業や小売業の売り上げアップに寄与している。当初試算されていた1000億台湾元(約3800億円)を上回る経済効果をもたらすことに成功したのだ。 他国がロックダウン(都市封鎖)を繰り返す最中、経済活動が停滞せず、国内消費が高い水準をキープしていること。これが台湾経済に勢いをもたらしている二つ目のファクターだといえるだろう。 ● 中国離れの進行で 人材が国内回帰 台湾経済を考える上で、中国との関係は無視できない。2000年代以降、中国の経済成長は目覚ましいが、特に2015年から2018年にかけて、台湾の若い働き手や新興企業が活路を求めて中国に流出する動きが顕著になっていた。しかし2019年に香港で大規模な民主化デモが勃発して以降、趨勢はガラッと変わったという。 「台湾社会では民主化を求める香港市民のデモへの共感が強く、抗議活動に対して暴力的な対応をとる中国政府の姿勢を見て、多くの台湾人は不信感を抱き、中国離れが急激に進行しました。台湾政府は同時期に、米中貿易摩擦を受けて中国から拠点を戻す企業に対し、用地探しの支援や融資面での優遇策をもうけるなど帰国投資への支援を強化。2000年代以降問題になっていた若者の低賃金問題も改善の兆しを見せ始めました。これを受けて、中国で活動していた企業や働き手の多くが台湾に戻ってきたんです。この動きはコロナ禍以降加速しています。これが台湾経済に活況をもたらしている3つ目の要因です」 コロナ前の生活を享受しながら、コロナで作り出された需要を取り込むことによって、他国がうらやむ経済成長を見せている台湾。この好況は今後も続くのだろうか。 「今後の台湾経済を占う上でポイントになるのは、半導体産業と米中経済摩擦の動向です。先述の台湾経済を支える重要企業であるTSMCは、かねて中国の通信機器メーカーであるファーウェイを大口の取引先としていましたが、昨年5月に中国企業への圧力を強める米国政府が輸出規制策を強めたため、ファーウェイへの半導体の輸出ができなくなりました。このときはファーウェイに代わる取引先をすぐに確保することができたため損失はありませんでしたが、今後も米中対立に巻き込まれる可能性はあります。また、製造企業の台湾への帰国投資もコスト増の要因です」 米国と中国という2つの経済大国の間に立たされているという意味で、日本と台湾の境遇は似ている。コロナの封じ込め対策はもちろん、米中両国に対する経済的な立ち振る舞いにおいても参考にできる点は多いはずだ。
