夏休み予算、コロナ前上回る 感染急増「水差す」恐れ 明治安田調査
2022年07月26日
明治安田生命保険が25日発表した夏休みに関するアンケート調査によると、レジャーなどに使う1世帯当たりの平均予算は前年比約1.3倍の6万8632円となった。 【図解】都道府県別新規感染者数(人口10万人当たり) 増加は4年ぶりで、予算額はコロナ禍前の2019年を上回った。3年ぶりに行動制限のない夏休みとなり、旅行などの計画を立てる人が多いようだ。 ただ、調査期間は6月20~24日で、その後は感染者数が急増している。明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは「旅行需要の盛り上がりが水を差される恐れもある」と指摘した。 調査では、全体の4分の1が昨年よりも使う金額を増やすと回答。その理由を複数回答で尋ねたところ、約半数が「旅行に行くため」と答えた。一方、物価高などの影響で全体の14.4%は使う金額を減らすと回答した。
穀物積み出しのオデーサ港にロシアがミサイル 食料輸出合意の翌日に
2022年07月24日
ウクライナ軍によると、23日午前、同国南部の黒海に臨むオデーサ港がロシア軍のミサイル攻撃を受け、一部の施設が爆発した。同港は22日に国連、トルコがロシア、ウクライナとそれぞれ署名した食料輸出再開のための合意文書で積み出し港に定められている。関係者は相次ぎ攻撃を非難した。 【写真】ロシア兵も恐れない母 3分間泣き続けた最後の電話 発射された4発のうち2発は迎撃されたが、2発が港の施設に命中したという。同国農業省はオデーサ港に数日内の輸出再開に向けた穀物がすでに用意されていたとしている。ウクライナのウニアン通信は、着弾したのは揚水設備で、同じ区域内の穀物倉庫は無事だったと伝えた。 合意を仲介したグテーレス国連事務総長の副報道官は23日、「事務総長は本日のオデーサへの攻撃を明確に批判する」との声明を出した。さらに合意について「昨日、すべての関係国、機関がウクライナの穀物と関係産物を世界市場に確実に移送することを誓った。完全な履行は必須だ」とし、輸出を再開するよう釘を刺した。 ■「顔につば吐いた」プーチン氏 ロイター通信によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は「(攻撃が)意味するのは、ロシアは何を約束しても実行しない方法を見つけ出すということだ」とコメントした。ニコレンコ外務省報道官も「ロシアのプーチン大統領はグテーレス氏や(ともに合意を仲介した)エルドアン・トルコ大統領の顔につばを吐いた」と批判した。一方で、ウクライナの担当閣僚は「食料輸出再開に向けた技術的な準備を続ける」とし、合意を履行する意思を示した
ゼレンスキー氏、失地回復なしの停戦応じず
2022年07月24日
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は22日、ロシアが2月の侵攻後に占領したウクライナ領土を支配し続ける形での停戦はさらなる紛争拡大を招き、ロシアに次の作戦に向けて軍の立て直しを図る絶好の機会を与えることになると危機感を示した。首都キーウの大統領府でウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューに応じた。 ゼレンスキー氏は「ロシアとの戦闘を止めるということは、ロシアに一息つくための休止を与えるということだ」と述べた。「ロシアが自らの地政学(戦略)を変更したり、旧ソ連構成共和国に対する要求を放棄したりするためにこの小休止を利用することはないだろう」 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は今週、ゼレンスキー氏が戦闘停止につながる外交的解決を望んでいないとして非難した。 ゼレンスキー氏はロシアを世界最大のクジラにたとえ「2つの地域を飲み込んだマッコウクジラが、今になって戦闘をやめろと言っている」と反論。「クジラは一休みして、2年後か3年後にさらに2つの地域を占領し、またこう言う、戦闘をやめろと。それが何度も何度も繰り返されることになる」と述べた。 一方、最近になって米国などから高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」や155ミリりゅう弾砲を供与されたことで、ドンバス地方におけるロシアの攻勢を鈍らせ、戦況を安定させる一助になっているとの認識を示した。 これにより、ウクライナ側の死傷者数も減少しているという。5月と6月の戦闘が最も激しかった時期には、1日当たり100~200人の兵士が死亡していたものの、今は30人ほどに減り、負傷者は250人前後だと明かした。 一方で、ゼレンスキー氏は武器や支援を提供する西側諸国に謝意を示しながらも、防空システムが早急に必要だと主張。ロシアが前線から遠く離れたウクライナの都市に長距離ミサイルを打ち込むのを阻止するには、防空システムが不可欠との考えを示した。米国とドイツは供与を約束したものの、いまだウクライナに届いていない。 2月以降に国外に脱出したウクライナ人は600万人以上に上り、その大半は今も欧州など国外にとどまっている。 ゼレンスキー氏は「なぜ経済が機能しないのか?人々が国外にいるからだ、女性も子供もだ」とした上で、「女性が子供を連れて帰ってきても、夫が戦っていたら、自分が働きに出なければならない。だがミサイルが飛んでくるかもしれず、みんな子供を学校に行かせるのを怖がっている」と語った。
ロシア軍に毎日数百人の死傷者、指揮系統が混乱=米国防総省筋
2022年07月24日
米国防総省の高官は22日、ウクライナ戦争でロシア軍が1日当たり数百人の死傷者を出しており、これまでに数千人の将校を失っているため指揮系統が混乱しているとの見解を示した。 ロシアは平時でも軍の死者数を国家機密としており、戦時も公式の死傷者数をほとんど更新していない。3月25日時点では死者数を1351人と発表していた。 バーンズ米中央情報局(CIA)長官は20日、ウクライナ戦争でこれまでにロシア側の死者が約1万5000人、負傷者は4万5000人に達したとの見方を示した。
日米の経済版2プラス2、経済安保協力を抜本強化へ…議題案が判明
2022年07月24日
日米両政府が米ワシントンで29日に初めて開催する外務・経済閣僚による「日米経済政策協議委員会」(経済版2プラス2)の議題案が判明した。半導体を含む先端技術の保護など経済安全保障分野での協力の抜本強化策を協議するほか、対中・対露を念頭に日米主導でインド太平洋地域での経済秩序構築を図ることで一致する見通しだ。
読売新聞が入手した議題案によると、半導体のサプライチェーン(供給網)強化などが主要課題となる。萩生田経済産業相が5月の訪米時、半導体の生産能力強化や研究開発での協力を米側と確認したことを踏まえ、次世代の最先端技術品目の安定調達に向けた態勢強化で合意する見通しだ。
新型コロナウイルス禍で、半導体は世界的な品不足が深刻化し、インフレ(物価上昇)の一因ともなっている。日米は、供給不足への対応でも連携を深める。
経済版2プラス2は、日米同盟の協力を経済分野へ拡大していくことを主眼に日米首脳が1月のテレビ会談で創設に合意していた。日本から林外相と萩生田氏、米側からブリンケン国務長官とレモンド商務長官が出席する。会合後には共同文書も発表する方向だ。
初会合では、米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の推進で一致する見通しだ。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を意識した第三国におけるインフラ協力の推進も議題となる。
また、5月に日本で経済安保推進法が成立したことを踏まえ、日米の先端技術の流出を防ぐための方策についても協議する。高速・大容量通信規格「5G」や基幹インフラの安定性のルール作りなどで連携を強化する。蓄電池やその原料となる重要鉱物の調達を巡っても協力を推進する。
バイデン米政権が問題視している中国などによる人権侵害を巡っては、監視技術などの悪用を防ぐため、輸出管理の強化も議論する。米国が中国に対して実施している新疆ウイグル自治区からの輸入の原則禁止措置は、日本企業にも違反が指摘されるなど大きな影響が出ている。日米は、供給網が被る負担を低減するための取り組みも進める。
ロシアによるウクライナ侵略の影響による食料問題やエネルギー価格の高騰も議題となる。日米は、食料やエネルギー分野の安全保障における協力強化に向けても協議する見通しだ。
「経済安保推進室」8月1日に発足へ 政府
2022年07月24日
政府が経済安全保障の強化に向け、内閣府に設置予定の「経済安全保障推進室」(仮称)について、8月1日に発足させる方向で調整していることが23日、分かった。5月の経済安保推進法の成立を受け、関係省庁間にまたがる問題の調整や対応にあたる。国家安全保障局(NSS)とともに経済安保政策の司令塔機能を果たしていくことになる。複数の政府関係者が明らかにした。 【表でみる】経済安全保障をめぐる政府の主な動き 政府は6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」で、「情勢の変化に柔軟かつ機動的に対応する観点から関係省庁の事務の調整を行う枠組みを整備する」として、推進室の設置を盛り込んだ。 設置時期に関しては、経済安保推進法の公布(5月18日)から6カ月以内とされていたが、小林鷹之経済安保相はこれまで「可及的速やかに、6カ月ということを待たず、前倒しして立ち上げていく」と語っていた。 推進室は、昨年11月に法制化に向けて内閣官房に設置した「経済安全保障法制準備室」の名称を変更して立ち上げ、発展させる方針。準備室の職員は約50人だが、推進室への移行に伴って、経済産業省など関係省庁から出向する人員も増やしていく方向で準備を進めている。 中国の軍事、科学技術面での台頭や、ロシアによるウクライナ侵攻などを受け、国民生活に影響する重要物資の安定調達など、経済活動と安保を一体的に捉える観点が不可欠になっており、経済安保の重要性は一層増している。 経済安保推進法は、半導体など重要物資のサプライチェーン(供給網)の確保▽基幹インフラ(社会基盤)設備の事前審査▽先端技術開発▽特許の非公開-の4つの柱で構成されている。政府は今後、法律の基本方針や基本指針を定め、詳細な規制対象などについて政省令で具体化していく方針だ。
債務危機に揺らぐ中国恒大、夏海鈞CEOと最高財務責任者が辞任
2022年07月24日
債務危機に陥っている中国の不動産開発大手、中国恒大集団は22日、夏海鈞最高経営責任者(CEO)が辞任したことを明らかにした。
発表資料によると、同社幹部の肖恩氏が後任となる。最高財務責任者(CFO)の潘大栄氏も職を退いた。
中国恒大集団を巡っては、傘下の不動産サービス会社である恒大物業集団で預金134億元(約2700億円)相当が第三者の担保保証として使われていたことが判明。保証額は恒大物業が保有現金の大半を失いかねない規模で、中国恒大が調査を進めていた。
中国恒大傘下の恒大物業が調査-預金2500億円が担保保証に使われる
22日の当局への届け出によれば、中国恒大集団の取締役会は夏氏と潘氏および別の幹部1人に辞任を要求した。予備調査の結果、担保保証のアレンジにこの3氏が関与していたとの情報が得られたためだという。
中国恒大集団は独立調査委員会が調査を終了し次第、報告書を公表すると説明した。
同社は中国不動産業界で広がる債務危機の中でも、特に動向が注目されている。昨年12月にはドル建て債でデフォルト(債務不履行)に陥った。
過去には30億円の高額賠償も!? 超高価な物損事故にいったいどう備えるべきか
2022年07月24日
車を運転するなら保険加入が当たり前。特に最近の判例を見ると、人身事故の際は大変な金額となるため任意保険への加入は必須で、なるべく手厚い保証に設定したい。だが「対物に関しては通常の保証で十分」などと考えていないだろうか? 【画像ギャラリー】物損事故保証も手厚くしておきたい理由を画像でチェック(7枚) 今回の記事を読んでいただければ、そんな考えは消し飛ぶに違いない。過去にあった高額な事故から、標識や自動販売機など、身近なアイテムとの事故について、その保証額ご紹介しよう。 文/藤田竜太、写真/AdobeStock(トップ画像=bogdan vacarciuc@AdobeStock)
■対物賠償の加入率は75.1%!!保険なしでは怖すぎる!!

高速道路でトラックが横転、炎上して積荷を焼失させた事故では、2億6135万円の認定損害額を認めた例がある(vichie81@AdobeStock)
自動車ユーザーなら誰でも加入していると思われている自動車保険(任意保険)。しかし、損害保険料率算出機構の調べによると、任意保険の対人賠償の加入率は75.1%、対物賠償の加入率は75.1%とのこと。 これは全国平均の数字なので、大阪、愛知、神奈川、京都などは加入率80%以上だが、沖縄や島根では50%台にとどまっている……。 また、かつてタクシーは対物保険に加入していないといわれた時代があったが、2005年から加入が義務づけられ、対人賠償で8,000万円以上、対物賠償で200万円以上(免責30万円以下)の保険に加入しないと国土交通省の営業許可が下りないことになった。 しかしクルマに乗るのなら、対人保険はもちろんだが対物保険も絶対無制限で加入しておくべきだ。というのも、近年自動車事故の損害賠償額がどんどん高額になってきているため。 一例を挙げると、2008年に首都高速道路でタンクローリーが横転して火災が発生した事故で、道路高架部分の掛替費用(約17億円)と、 2 カ月あまりの通行止めによる通行料金の営業損失を合わせ、32億8900万円の支払いを命じた東京地裁の判決は記憶に新しいところ。 他にも1994年に高速道路でトラックが横転、炎上して車両と呉服、洋服、毛皮など積荷を焼失させた事故では、2億6135万円の認定損害額を認めた神戸地裁の例や、1996年に乗用車がセンターラインをはみ出して、トラックに正面衝突。道路脇のパチンコ店に飛び込み、1億3450万円の賠償金を東京地裁が認めている。 このように、賠償額が1億円を超えるケースも出てきていることを考えると、対物保険は無制限にするのがベスト。もし保険料を節約したければ賠償額ではなく、免責分を増やすべき。 上掲のように1億円を越える例はさすがに稀だとしても、もっと身近なモノを事故で壊してしまった場合も、意外に高額な請求が来るので要注意。 例えば、街中でよく見かける飲み物の自動販売機。標準タイプでも80万円すると言われ、大型のものだと200万円級も珍しくない。 カーブミラーだとモノ自体は2~4万円と安価だが、設置費用などを加えると20万円は必要。 ガードレールは1メートルあたり5000円~1万円が相場だが、工賃や人件費などを考えると30万円ぐらい請求されることも。 ETCのゲートのバーは、1本6万5000円ほど。通常、左右一対になっているので、2本折ってしまうと13万円! よくニュースになっている、ブレーキとアクセルの踏み間違いで、コンビニの店舗に突っ込んでしまった場合はどうか。これはもちろん程度にもよるが、修理のために店舗が営業できなくなったとすると、店舗休業損害が10日間でおよそ60万円。その他修理費が実費で200万円ぐらいかかったりする。 電柱は15mタイプで1本約15万円。これに折れた電柱の抜き替え作業が加わると、30~70万円ぐらいは覚悟した方がいい。 馬鹿馬鹿しいのは道路標識で、オーソドックスなモノでも40~50万円もかかるらしい。特定企業(天下り系)が受注を独占しているため、強気な価格設定になっているともいわれている!? 信号機は制御装置まで壊すと200万円以上はする……。
火が付いた高級腕時計ブーム「冷める要因見当たらない」…富裕層に受け入れられる理由とは
2022年07月24日
コロナ禍で、名古屋市内の百貨店などで高級腕時計の商戦が過熱している。移動制限で浮いた富裕層の消費の受け皿として販売が好調に推移しており、各店がブティック新設や売り場改装に踏み込み、顧客の取り込みを競っている。(佐野寛貴) 【写真】名古屋三越栄店に新設された「パテック フィリップ」のブティック(6月17日)
19年度比で売上高14%増

改装オープンした松坂屋名古屋店の時計売り場(5日、名古屋市中区で)
松坂屋名古屋店(名古屋市中区)は今月、改装した時計売り場「ジェンタ ザ ウォッチ」をオープンさせた。売り場面積を従来の約2倍となる1200平方メートルに広げ、11の新規ブランドを筆頭に、ラインアップを充実させた。
売り場全体では81のブランドが並ぶ。ガラス越しに作業を眺められる「時計修理カウンター」を設けて開放感を意識し、来店のしやすさを演出した。長谷場和也営業2部長は「商品を並べるだけでなく、同じ物を長く使えるサービスも展開する。ゆっくりと楽しんでほしい」と語る。
松坂屋名古屋店の時計売上高は、大丸松坂屋グループ全体でもトップの規模を誇る。「愛知県の方を中心に、時計だけでなくアートなど資産性の高いものにお金を使う人が多い」と長谷場部長。2021年度の売上高はコロナ禍前の19年度比で14%増と、グループ全店平均の6%を大幅に上回った。インバウンド(訪日客)需要の消失による打撃が限定的だったことに加え、コロナ禍で海外旅行に行けなくなった富裕層の購買が伸びたことがプラスにつながった。外商の売り上げ比率が高く、地元富裕層からの支持を集めている同店の強みが発揮されたかたちだ。
数千万円の商品も
名古屋三越栄店(同区)でも6月、大津通に面した1階部分にスイスの高級時計メーカー「パテック フィリップ」のブティックが新設された。取り扱う商品の価格帯は数百万~数千万円だが、オープン当初から目標を上回る商談が舞い込んでいるという。
従来は6階時計売り場の1コーナーとしての出店にとどまったが、ブティックとすることで面積を約2倍に拡張し、商談スペースやVIPルームを備えた。特選ブランドを管轄する名古屋三越ファッション担当の岩本博担当長は「同じブランドを同じ規模で展開しても、差別化にならない。最高峰の商品とおもてなしで富裕層を囲い込みたい」と意気込む。
5人か1人か、どちらを救う? 自動運転車が直面する「トロッコ問題」【けいざい百景】
2022年07月24日
あなたが乗っている自動運転車の前方に、突然5人が飛び出してくる場面を想像してほしい。今のスピードのままではブレーキが間に合わず、右側の対向車線には避ける余地がないほど車が続いている。車は乗員の命を守ることを前提に、右に進路を変えることはなさそうだ。左側の歩道には歩いている1人が見える。直進すれば5人にぶつかり、左に回避すれば1人を巻き込むことが予想される。「トロッコ問題」と呼ばれるこの究極の2択を迫られる状況で、自動運転車はどう動くべきか。(時事通信経済部 工藤玲) 【写真】自動運転倫理ガイドライン研究会による公開シンポジウム ◇倫理的な議論の意義 トロッコ問題は、当然ながら自動運転だけではなく、人間が自ら運転する場合にも起こり得る。ただ人間の場合、反射的にハンドルを切ったり、パニックで体が固まってしまったりと、冷静な判断が難しいケースが多い。一方の自動運転車は、考え得る限りのケースを想定し、あらかじめプログラミングした通りに作動する。つまりトロッコ問題に直面した自動運転車が、何を優先させてどのような動きを選択するかは、人間による事前の検討次第といえる。 そのまま直進すれば5人と衝突し、方向を変えれば1人が巻き込まれる場面。単純に犠牲者の数を最小限に抑えるのなら、瞬時にセンサーで人数を把握し、人数の少ない方に向きを変えることはできるだろう。1人の命より5人の命を優先する、言い換えれば5人を守り1人を犠牲にするプログラミングをすることになる。人間がとっさに判断する通常の車両よりも、事前に命の選別をも迫られるため、自動運転車の普及には倫理的な議論が不可欠だ。 メーカー側も、自動運転の技術を磨く上で、倫理的側面からの議論の必要性を感じている。ホンダで車両制御システムの研究開発に携わってきた波多野邦道氏は、「単に事故を起こさないことだけではなく、何をどのように配慮するのかという価値観(を考えること)が、非常に重要になってくる」と語る。 ◇倫理ガイドラインの現状は ドイツでは2017年、政府が立ち上げた倫理委員会が、自動運転車とコネクテッドカー(つながる車)に関する倫理指針を策定。命の軽重を年齢や性別といった個人の特徴で区別しないことや、責任の所在を明確にできる記録を残すことなど、20の規則を示している。自動運転に特化した同様の提言は欧州連合(EU)や米国にもある。日本政府は19年3月、人工知能(AI)の開発や活用に関する「AI社会原則」を策定しているものの、自動運転に特化したものではない。 そうした中、日本でも民間主導で、法学や倫理学、工学などさまざまな分野から専門家10人が集まり、「自動運転倫理ガイドライン研究会」が21年9月に立ち上がった。樋笠尭士代表(多摩大学専任講師、名古屋大学客員准教授)は、「メーカーが車内の人を守るのは当たり前だが、歩行者を犠牲にしてはならないのも当たり前。その対立が表れてしまうのが自動運転の世界だ」と話し、車に乗っていない人命にも影響が及ぶ特異性から、自動運転固有の倫理指針の必要性を強調。国にも働き掛けたい考えだ。 研究会は今年6月にシンポジウムを開催し、「自動運転倫理ガイドライン案」を公開した。乗員や歩行者の別を問わず人命を尊重することや、メーカーは自動運転システムが作動する条件などを誇張せず使用者に伝えることなど、計11の指針を示した。 ドイツの指針では、トロッコ問題は不測の事態が多く一般化が難しいため、事前のプログラミングはすべきでないとの立場を示している。樋笠代表は「ある意味(独の指針は)、メーカーを悩みから解放してあげている。でも、それでいいのかというのがわれわれの考え方だ」と説明する。 そこで研究会はトロッコ問題への対応について、指針の中で、時代によって変わっていく価値観に応じ、業界全体で方向性を定めることを目指すべきだとした。事前のプログラミングを否定せず、独の指針とは異なる立場を取った。
