「温暖化のおかげで北海道の米がうまくなった」麻生氏発言→専門家「温暖化の影響はほとんどない」と指摘
2021年10月27日
「温暖化したおかげで北海道のコメは美味くなった」。 10月25日、北海道小樽市で行われた街頭演説での自民党の麻生太郎・副総裁の発言が波紋を呼んでいる。「農家のおかげですか?農協の力ですか?違います」という内容にはSNSで「品種改良の努力を踏みにじっている」などと批判もあがっている。 【画像】各政党の気候危機対策は? わかりやすく解説 そもそも、この主張は正しいのか。 北海道大学農学研究院の専門家は、品種改良に加え、栽培技術や収穫後技術の改善を積み重ねた結果だと指摘。「温暖化の影響はほとんどない。猛暑である必要も、地球温暖化である必要もありません」と話している。
「農家のおかげ?違います」
問題の発言があったのは10月25日。小樽市で衆院選の自民党公認候補とともに街頭演説に立った麻生氏は「今、北海道は色々な意味であったかくなった。平均気温が2度上がったおかげで北海道のコメは美味しくなった」と切り出した。 そして「昔、北海道のコメは『やっかい道米』と言われるほど売れないコメだった。今はその北海道がやたら美味いコメを作るようになった。農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです」と発言した。 さらに「平均気温が2度上がったおかげで北海道のコメは美味しくなった。地球温暖化といえば悪い話しか書いてありませんが、温暖化でいいこともあります」とも話した。 この発言が報じられるとSNSでは、「品種改良の努力を踏みにじっている」などと批判の声が相次いだ。 発言では「おぼろづき」「こちぴかり」という銘柄を挙げ「金賞を取った」ともしているが、「こちぴかり」という銘柄は存在しない。類似の名前で「コシヒカリ」はあるが、北海道では生産されていない。
温暖化である必要ない

リモート取材に応じる北海道大学農学研究院の川村周三研究員・元教授。専門はコメの収穫後技術など。
では、「温暖化したおかげで米が美味くなった」とする麻生氏の発言はどの程度、正確と言えるのか。 北海道大学農学研究院の川村周三(しゅうそう)研究員・元教授は「温暖化の影響はほとんどない」と指摘する。 北海道のコメは、以前は「美味しくない」という印象を持たれていた。「やっかい道米」と揶揄されていたのも事実だ。 この課題に1980年から取り組んできたのが農家や農協、それに農業試験場や研究者らだ。川村さんによると、1.品種改良2.栽培技術3.収穫後技術の3点が、北海道産米の食味向上のポイントだという。 コメは一般に、でんぷんの成分「アミロース」とタンパク質の含有量を適度に下げることが必要になる。粘りがあり柔らかくなるからだ。 「北海道では初めてのコシヒカリ系統となる『きらら397』が1989年にデビューし、やっと美味しいコメが出てきました。さらに『彩(あや)』という遺伝的にアミロースが少ない品種が生まれると、今は同じ低アミロース系統品種の『おぼろづき』『ゆめぴりか』が広く栽培されています」 さらに、タンパク質量についても、原因となる窒素肥料を抑えるなど、栽培技術を向上させることで減らすことに成功した。 コメの収穫後に用いられる技術の進歩も味の向上につながった。例えば収穫後のコメのタンパク質量や成熟した米粒の割合を測る「自動品質判定」や、北海道の冷たい自然の空気をサイロに送り込むことで、籾をマイナス5度からマイナス10度程度まで冷やす技術などを独自に開発した。 こうした過程を踏まえると、麻生氏の「農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです」という発言は誤っているとみられる。 一方で、温暖化の影響が考えられるのは、稲の花が咲いてから収穫するまでの登熟期間だ。この期間の気温が高いとアミロースは低下し、粘りがあり柔らかいコメになる。麻生氏も「お米の花が実に変わるあのころの温度が2度上がった」と発言しているが、このことを指している可能性はありそうだ。 しかし川村さんは「暑い年でないと美味しいコメができない、というわけではありません。平年並みでも、過去には冷害年でも『ゆめぴりか』は食味試験で高い評価を得ています。猛暑である必要も、地球温暖化である必要もありません。さらに、高温障害は本州以南で問題になっています」と指摘している。
高卒なのに「大卒」と給与算定、15年間で400万円過払い…返還求める方向
2021年10月25日
公益社団法人・峡北広域シルバー人材センター(山梨県韮崎市中田町中条)で少なくとも約15年間で計約400万円の給与過払いがあったことがわかった。
センターによると、基準より多く給与を受けとっていたのは勤続30年の職員。高校卒業後、大学を中退していたが、大卒として給与算定されていたことが資料の残る期間で確認された。
人事台帳には大学の在籍証明書はあったが、卒業証明書はなかった。センターの調査に対し、7月に職員から「勤務当初から高卒と言っている」と回答があり、9月の給与から高卒の給与に改めた。
センターは「大卒扱いになった経緯は不明」としている。確認された給与過払い分については返還を求める方向で25日の理事会に諮る見通し。
飼料高騰深刻 畜産農家「耐えるだけ…」 自給にもコスト、補填追いつかず
2021年10月25日
配合飼料の高騰が、畜産経営に影を落としている。JA全農の10~12月期の配合飼料供給価格(全国全畜種総平均)は1トン当たり1250円下がったが、前期までの4期連続の値上げ幅は計1万5000円を超える。牧草など自給飼料を確保・拡大しにくい都府県では特に、大きな負担が畜産農家にのしかかっている。
値上がりが経営を直撃 群馬・酪農

牛に配合飼料を与える岩崎さん(前橋市で)
「対策はない。耐え忍ぶのみだ」。前橋市で搾乳牛と育成牛合わせて約70頭を、家族3人と従業員1人で飼育する岩崎正徳さん(45)は、険しい表情を見せた。 岩崎さんは年間450トンの生乳を出荷し、約6000万円を売り上げる。配合飼料はJA全農ぐんまなどから月に計20トン購入しており「値上がり分は経営を直撃する」という。牧草15ヘクタールと青刈りトウモロコシ約7ヘクタールで飼料自給にも取り組むが、増やそうにも「人手が足りず、燃料代などのコストもかかる」と簡単ではない。 1年ほど前、高騰以前の配合飼料の価格は1トン当たり約5万円台後半だったが、この1年で同7万円台前半に値上がりした。高騰前で30%程度だった生産費に占める購入飼料費(粗飼料を含む)の割合は今年、40%程度に増す見込み。「生産費を抑えるには餌の質を下げるか、自分の休みを減らし人件費を抑えるしかない」と言う。 輸入原料の高騰で配合飼料価格が上昇した際の影響を緩和する、配合飼料価格安定制度での補填(ほてん)も、高騰の影響を受け止め切れていない。岩崎さんの場合、7~9月期の補填金は同約4300円。「長期的に価格が上がり続ける状況をカバーできない」とこぼす。 配合飼料価格の先行きは不透明だ。シカゴトウモロコシ価格は現在、5月の高騰時に比べれば下げたが、1年前に比べ3、4割高い。飼料関係者は「海上運賃や海外での穀物需要、為替などが影響してくるので情勢は見通せない」と言う。岩崎さんは「生産費の上昇を売値に反映してほしい」と要望する。
中国当局、新型コロナの感染拡大リスク警告 地方に監視強化要請
2021年10月25日
中国国家衛生健康委員会の報道官は24日、国内で新型コロナウイルスの感染がさらに拡大する可能性が高まっていると警告した。当局は、監視強化を地方当局に要請、省をまたいだ移動を控えるよう呼び掛けた。 中国はコロナ感染抑制におおむね成功しているが、来年2月に北京で開催する冬季五輪に向け、散発的な感染を封じ込めようとしている。 中国ではこの1週間に、11省で100人以上の市中感染者が確認された。その大半が13のツアーグループに関連したものとみられる。 衛生健康委報道官は、記者団に対して「季節的な要因」を背景に、新型コロナの感染が一段と拡大するリスクが高まっていると強調した。 同委副主任は、現在広がっている新型コロナ変異株のデルタ株は感染力が極めて強いと説明。配列を解析したところ、現在の感染は従来の感染源と異なっているとし、海外から持ち込まれた可能性を示唆した。
習近平政権の不動産税導入は景気悪化招く劇薬
2021年10月25日
中国の習近平政権が、日本の固定資産税に相当する「不動産税」を試験的に導入する。中国不動産市場では投機的な動きが過熱して住宅価格高騰が続いており、庶民が不満を募らせているためだ。習政権は、富裕層からの反発を押し切って強権で改革を進める構えだが、不動産税は景気悪化を招く劇薬となる可能性もある。 【画像】日中間の主な懸案 中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は23日、不動産税を一部地域で試験導入すると決定。試行期間は5年間で、実施都市など具体策は国務院(政府)が決める。 不動産税の試験導入は、習国家主席の主導だ。中国共産党の理論誌「求是」によると、習氏は8月の党内会議で「不動産税の法制定や改革を積極的、確実に進めなければならない」と指示していた。 習政権は「共同富裕」を掲げ、貧富の格差解消に重点を置く。一部に集中する富の再分配が目的で、高所得層や企業に社会への還元を求める。そうした中、格差の象徴としてやり玉にあがるのが不動産だ。富裕層の投機的な動きを受け、住宅価格の平均年収に対する倍率は都市部では数十倍に高騰。庶民が簡単に手を出せるものではない。 不動産税で住宅価格高騰に歯止めを掛けることを狙う。地方政府は国が所有する土地の使用権の売却収入を主要な財源としており、代替財源となる税導入で財源を安定化させて乱開発を防ぐ効果も期待される。 2011年には直轄市である上海、重慶で不動産税を試験導入したが、建物のみが課税対象だった。今回は土地も含めた課税で、試行を経て全国での本格導入を視野に入れる。党内を含めた既得権益層からの反発は根強いが、習氏は強権をもって断行する方針とみられる。 習政権は既に、不動産バブル退治へ融資規制を打ち出し、その直撃を受けて「中国恒大集団」など不動産大手が経営状況を悪化させた。不動産税の導入でマンション売却などが進めば大幅な景気悪化に直結する可能性もあるため、改革は〝もろ刃の剣〟といえる。
恒大「野望の象徴」10万人スタジアムの現場 作業員「飢え死にだ」
2021年10月25日
「もう3カ月も給料が支払われていない」 「連行するならそうしろ、自分で働いたカネを求めて何が悪い」 【写真】中国恒大集団の創業者・許家印氏が生まれ育った家の門=2021年9月26日、河南省聚台崗村、井上亮撮影 20日午後、広州市中心部から南へ車で約30分。中国の不動産大手・中国恒大集団が、「世界一」を目指して建設を進めてきたサッカースタジアムの建設現場に行くと、約30人の建設作業員が事務所前に押し寄せていた。 作業員たちは事務所から現場責任者とみられる人物を帰らせないように、体を張って出入り口を封鎖していた。 かけつけた警官も当初は、道路を塞ぐのは法律違反だと顔を真っ赤にして取り締まる勢いだった。 しかし、あるピンク色のシャツを着た作業員は「俺たちは出稼ぎの農民工だ。政府のお前たちが給料を補償してくれ。でないとここで飢え死にする」と引き下がらない。 すぐ後ろの壁には「歓迎 共産党100年」のスローガン。警官は9人にまで増えたが、男たちの怒りを収めるためか、少し距離を置いて監視する方法に切り替えた。 このスタジアムは、拡大路線を突き進んできた恒大の「野望の象徴」だった。 中国共産党機関紙・人民日報の昨年7月の報道によると、建築面積は約30万平方メートルで、収容観客数は10万人だ。 広州市都市計画委員会が全会一致でスタジアム計画を承認し、「世界最大規模、最高のグレード、最も優れた科学技術を取り入れた国際的なプロサッカースタジアム」が2022年末までにオープンすると宣伝していた。 米、英、ドイツ、オーストラリアなど8カ国の有名な設計士に依頼し、最終的に米国案に決まった。 しかし、その計画が暗転するまで1年もたたなかった。 工事関係者によると、建設資金が支払われなくなり、今年6月から工事が実質的に止まっているという。恒大の経営危機が表面化した9月より3カ月も前のことだ。 建設現場では、約10本の巨大なクレーンが天に向かって立っているが、動いていない。 赤茶色にさびた建設資材が積み上げられ、白いコンクリートがむき出しになったスタジアムで作業をしている人の姿は見当たらなかった。
バージニア州知事選、陰の主役はトランプ氏 中間選挙の前哨戦で過熱
2021年10月25日
来年秋の米中間選挙の前哨戦として、11月2日投開票の東部バージニア州知事選挙が過熱している。選挙戦の「陰の主役」がトランプ前大統領になりつつあり、23日の民主党候補の集会にはオバマ元大統領もてこ入れに駆けつけた。結果はトランプ氏の今後の影響力を占う試金石になると注目されている。 【画像】トランプ氏が敗れた理由は? 11万人有権者調査を分析 バージニア州知事選は、元同州知事で民主党候補のテリー・マコーリフ氏と、トランプ氏からの支持表明を受けた共和党候補の元投資会社経営者グレン・ヤンキン氏が争う。 23日、州都リッチモンドのバージニア・コモンウェルス大学であったマコーリフ氏の集会でオバマ氏が登壇すると歓声が沸いた。 オバマ氏は「前回の大統領選をめぐる偽情報や誤情報を広めるのではなく、我々の民主主義を強化し、投票しやすくするべきだ」と語り、トランプ氏の支持者らの言動を批判した。 マコーリフ氏も「ヤンキン氏はトランプ氏の狂った陰謀論を宣伝し、バージニア州が直面している最も重要な問題は選挙の公正性だと語った。雇用でも経済でも新型コロナでもなく、陰謀論だというのだ」と指摘。「対トランプ」を前面に打ち出している。 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した各種世論調査の平均値によると、8月まではマコーリフ氏が支持率で5ポイント以上の差をつけて優勢だったが、現在は2ポイント未満に縮まっている。バイデン政権の支持率が、米軍のアフガニスタン撤退や新型コロナ対策をめぐって低下傾向にあることも、影響しているとみられる。 選挙戦がここに来て過熱しているのは、対立軸としてトランプ前大統領の存在感が増しているためだ。 マコーリフ氏陣営は、選挙CMに1月の議会襲撃事件の映像などを盛り込み、トランプ氏とヤンキン氏の関係を有権者に印象づけようと躍起になっている。 一方、ヤンキン氏はトランプ氏の支持層にアピールしつつ、トランプ氏の名前を繰り返し持ち出すマコーリフ氏を牽制(けんせい)する。候補者討論会では、「何度トランプの名前を出すつもりか。これはあなたと私の戦いだ」と反論した。 トランプ氏に近いグループは13日、リッチモンドで集会を開催。トランプ氏も電話で参加し、「ヤンキン氏はすばらしい人物だ」などとたたえたが、ヤンキン氏本人は出席を見送った。
台風20号が発生 発達しながら北上する 週後半には小笠原に接近
2021年10月25日
25日午前9時、フィリピンの東で台風20号が発生した。 台風の中心気圧は1002ヘクトパスカル、最大風速は18メートル、最大瞬間風速は25メートルで、1時間に約20キロの速さで北西に進んでいる。 台風は今後、発達する見込みで、29日(金)ごろに非常に強い勢力で小笠原近海に達するおそれがある。今後も、最新の台風情報に注意が必要だ。
トヨタ労連、立民離れ…共産共闘に拒否感「もはや敵だ」と反発も
2021年10月25日
旧民主党の「牙城」とされる愛知県で、全トヨタ労働組合連合会(全ト)の支援を受けてきた古本伸一郎前衆院議員(愛知11区)が衆院選不出馬を決めたことが、立憲民主党内に波紋を広げている。全トが与党と関係強化に動く中、立民の党名を隠して全トとの連携維持を図る候補も出ている。 【写真】厳しい表情で衆院選の不出馬を表明する、トヨタ労組出身の古本伸一郎氏
「自動車産業を守ることは国を守ることだ。古本さんの不出馬はショックだが、自分が自動車産業をしょって立つ」
24日、同県西尾市で開かれた決起集会で、立民候補はこう語り、支持を訴えた。演説の中で「立民」と言及したのは1度だけ。のぼり旗にも党名はない。全トに「党を表に出さない」と約束して支援を受けていることを意識したためとみられる。
陣営では、「古本氏の不出馬は、全トの組合員に『自民党に投票してよい』とのサインになる」との危機感が強まっている。
古本氏は全トに加盟するトヨタ労組出身。6期連続当選し、財務政務官などを歴任した。昨年9月の旧立民と旧国民民主党の合流には加わらなかったが、立民会派に所属していた。
一方、約35万人の組合員を抱える全トは、2012年に民主党が下野した後も、古本氏ら同党出身議員の支援を続けてきたが、今年1月に自公両党と連携する方針を打ち出した。自動車業界がカーボンニュートラルへの対応など変革を迫られる中、「政策実現のために与党とも連携すべきだ」との声が強まったためだ。
衆院解散日の14日、愛知県豊田市で行った記者会見で古本氏は不出馬を表明。同席したトヨタ労組の西野勝義執行委員長は「(各政党とは)是々非々で連携を模索していく」と述べた。
全トが与党との連携に動いた背景には、立民と共産党の共闘に対する拒否感もある。立民は共産と歩調を合わせて大企業に対する課税強化などを主張しており、全ト内には「立民はもはや敵だ」との反発も出ている。
巨大労組の方針転換に対し、党内からは「愛知11区だけの問題にとどまらない」(若手)と不安視する声があがっている。
最高裁判事は「仮面」脱げ 建前を捨てた元判事、国民審査への提言
2021年10月25日
1日の衆院選投票日には、最高裁判所裁判官の国民審査も実施される。直接投票で裁判官を辞めさせられる唯一の機会だが、過去に罷免された判事はおらず、制度の形骸化もささやかれる。そんな中、元最高裁判事の山浦善樹さん(75)は「裁判官が『仮面』を脱げば、国民との対話の場になる」と訴える。思いの奥にあるのは、自らが審査を受けた際に届いた一枚のはがきだった。 【データで見る2021衆院選】
趣味はバードウォッチング、裁判官の素顔
弁護士だった山浦さんは2012年3月に最高裁判事に就任した。街角に小さな弁護士事務所を構え、市民に寄り添う「マチ弁」を約30年続けていた。その経験から、就任の記者会見では「(裁判の)記録の中に埋もれている悲鳴や叫びをキャッチしたい」と抱負を語った。
同年12月に衆院選が行われた。最高裁判事は、就任後に初めて実施される衆院選の際に国民審査を受ける。山浦さんを含む10人の判事が対象だった。顔写真や略歴、心構えなどを記載した審査公報が全戸に配られるが、山浦さんは過去の公報の形に違和感を覚えた。「法に従い、公正に」「証拠に照らし、適切に」など、誰もが思いつく文言ばかりで、建前に終始し、まるで全員が同じ「仮面」を着けているように見えた。「国民に初めて自分を知ってもらう大切な機会だ」と、先例にとらわれないことを心に決めた。
「著名事件や大型事件を担当したことはありません」「市民は本当に法律によって守られているのか、疑問を感じてきました」。「心構え」の欄には、マチ弁として感じてきたことを素直に書いた。裁判は公正でなければならないが、現実は弁護士を何人も雇える資力のある人が有利になりがちだ。きれいごとばかりではないと肌で感じてきたからこそ、最後に「武器を持たない市民の悲鳴を聞き出すことに全力投球する」とつづった。
バードウオッチングや音楽鑑賞の趣味も紹介した。「近くの公園に行くと、自然の中には地球の仲間がたくさんいることに気付きます」「仕事で疲れたとき、モーツァルトさんが隣に座って話しかけてくれるから不思議です」と、人柄が思い浮かぶように工夫した。趣味を取り上げたのは山浦さんだけだった。
